ビスフェノールA(BPA)は、食品や飲みもののプラスチック(ポリカーボネート樹脂製)容器や缶内面の防蝕塗装に広く使われているエポキシ樹脂である。溶出したBPAが動物に及ぼす影響についてはエビデンスが示されており、ヒトにおいても低レベルの長期曝露によって健康被害が生じるおそれが指摘されている。本論は英国ペニンシュラ医科大学のIain A. Lang氏らによる米国人を対象とした横断研究の結果。JAMA誌2008年9月17日号に掲載された。
米国健康栄養調査のデータで横断研究を実施
尿中BPA濃度と米国成人の健康状態との関連を目的とした横断研究は、全米健康栄養調査2003~2004のデータを使用し行われた。
分析対象となったのは18~74歳の1,455例で、各人の尿中BPA濃度と尿中クレアチニン濃度の測定値。年齢、性、人種/民族、学歴、収入、喫煙、BMI、腹囲、尿中クレアチニン濃度によって補正された回帰モデルにて分析された。
主要評価項目は、慢性疾患診断と血液検査値から肝機能、耐糖能、炎症、脂質の状態。
尿中BPA濃度と心血管系疾患、糖尿病の罹患率が相関
結果、年齢、性補正モデルおよび完全補正モデルで、尿中BPA濃度がより高いほど心血管系疾患との関連がみられた(BPA濃度1-SD増加につきオッズ比:1.39、95%信頼区間:1.18~1.63、P=0.001)。また、BPA濃度が高いことと糖尿病との関連も確認された(1.39、1.21~1.60、P<0.001)。それ以外の疾患との関連は認められなかった。
さらに、BPA濃度が高いほど、臨床的にγ-GTP(1.29、1.14~1.46、P<0.001)、ALP(1.48、1.18~1.85、P=0.002)の異常値との関連がみられた。
これらからLang氏は、尿中の高BPA濃度が高レベルのBPA曝露の結果であるとするなら、一般成人集団がこれらに曝露されないようにすることで、心血管系疾患や糖尿病罹患を回避できる可能性があると述べている。
★厚労省:ビスフェノールAについてのQ&A(
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kigu/topics/080707-1.html)
(朝田哲明:医療ライター)