急性心筋梗塞による心原性ショック(AMICS)の患者に対する積極的な経皮的機械的循環補助(MCS)デバイスの使用は、6ヵ月死亡を抑制せず、大出血および血管合併症を増加したことが、ドイツ・ライプチヒ大学ハートセンターのHolger Thiele氏らMCS Collaborator Scientific Groupが行った個別患者データのメタ解析の結果で示された。ただし、低酸素脳症のリスクがないST上昇型心筋梗塞(STEMI)による心原性ショックの患者では、MCS使用後に死亡率の低下が認められた。積極的な経皮的MCSは、死亡への影響に関して相反するエビデンスが示されているにもかかわらず、AMICS治療での使用が増加しているという。本検討で研究グループは、AMICS患者における早期ルーチンの積極的な経皮的MCSと対照治療の6ヵ月死亡率への影響を確認した。結果を踏まえて著者は、「MCSの使用は、特定の患者のみに限定すべきである」としている。Lancet誌2024年9月14日号掲載の報告。
MCS(VA-ECMOなど)vs.対照治療の6ヵ月死亡率をメタ解析で評価
個別患者データのメタ解析は、言語を制限せず、PubMed経由のMEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embase、ClinicalTrials.govの電子データベースを2024年1月26日時点で検索し、適切な無作為化比較試験(3つの検索単語群を用い、各群の少なくとも1単語がマッチした試験)を特定した。
解析には、AMICS患者の治療について早期ルーチンの積極的な経皮的MCS治療(無作為化後カテーテル検査室でただちに施行)と対照治療の6ヵ月死亡のデータを比較しているすべての無作為化比較試験を組み入れた。
主要アウトカムは、対照治療を受けた場合と比較した、早期ルーチン積極的経皮的MCS治療を受けたAMICS患者の6ヵ月死亡率で、デバイスタイプ(loadingタイプ[venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMOなど]、unloadingタイプ)および患者の選択(すべての心筋梗塞、低酸素脳症リスクがないSTEMI)に焦点を当て、Cox比例モデルを用いてハザード比(HR)を算出し評価した。
MCS使用の6ヵ月死亡率への影響に有意差は認められず
無作為化比較試験の報告9件(患者1,114例)が詳細に評価された。
全体として、VA-ECMO治療と対照治療の試験が4件(611例)、左室unloadingデバイス使用治療と対照治療の試験が5件(503例)であった。2試験に含まれていたAMICSではない患者55例(44例がVA-ECMO、11例が左室unloadingデバイスで治療を受けていた)のデータは除外された。
患者の年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~73)、データが得られた1,058例のうち845例(79.9%)が男性で、213例(20.1%)が女性であった。
ITT集団において、早期MCS使用の6ヵ月死亡率への影響について有意差は認められなかった(HR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.74~1.03]、p=0.10)。VA-ECMO治療と対照治療(0.93[0.75~1.17]、p=0.55)、左室unloadingデバイス使用治療と対照治療(0.80[0.62~1.02]、p=0.075)でも有意差は観察されなかった。
低酸素脳症リスクがないST上昇型心原性ショックの患者では、MCS使用による6ヵ月死亡率の低下がみられた(HR:0.77[95%CI:0.61~0.97]、p=0.024)。
大出血(オッズ比:2.64[95%CI:1.91~3.65])および血管合併症(4.43[2.37~8.26])は、対照治療群と比べてMCS治療群で多くみられた。
(ケアネット)