セマグルチドがHFpEF患者の心不全イベントを抑制/Lancet

駆出率が軽度低下または保たれた心不全(HFpEF)患者の治療において、プラセボと比較してGLP-1受容体作動薬セマグルチドは、心血管死に対する効果は有意ではないものの、心血管死または心不全増悪イベントの複合エンドポイントと心不全増悪イベント単独のリスクを減少させ、忍容性も良好で重篤な有害事象の発現率は相対的に低いことが、米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMikhail N. Kosiborod氏らSELECT, FLOW, STEP-HFpEF, and STEP-HFpEF DM Trial Committees and Investigatorsの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年9月7日号で報告された。
4試験のHFpEF患者について統合解析
研究グループは、心不全イベントに及ぼすセマグルチド(週1回、皮下投与)の効果の評価を目的に、4つの無作為化プラセボ対照比較試験(SELECT、FLOW、STEP-HFpEF、STEP-HFpEF DM)の個々の参加者のデータを用いた事後的な統合解析を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。STEP-HFpEF試験とSTEP-HFpF DM試験は肥満関連のHFpEF患者、SELECT試験はアテローム性動脈硬化性心血管疾患と過体重/肥満の患者、FLOW試験は2型糖尿病と慢性腎臓病の患者を登録した。セマグルチドの用量は、SELECT試験、STEP-HFpEF試験、STEP-HFpEF DM試験が2.4mg、FLOW試験は1.0mgだった。
今回の解析では、STEP-HFpEF試験およびSTEP-HFpF DM試験の全参加者と、SELECT試験およびFLOW試験の参加者のうちHFpEFの既往歴を有する患者を対象とした。
主要エンドポイントは、心血管死または初回心不全増悪イベント(心不全による入院または緊急受診と定義)までの期間の複合とし、心血管死までの期間と初回心不全増悪イベントまでの期間の解析も行った。
主要エンドポイントはセマグルチド群5.4% vs.プラセボ群7.5%
4試験に合計2万2,282例が登録され、このうち3,743例(16.8%)がHFpEFの既往を有していた。1,914例がセマグルチド群、1,829例がプラセボ群だった。HFpEF患者の年齢中央値は64歳(四分位範囲:57~71)、1,425例(38.1%)が女性、3,382例(90.4%)が白人であった。追跡期間中央値は、STEP-HFpEF試験とSTEP-HFpF DM試験が13.2ヵ月、SELECT試験が41.8ヵ月、FLOW試験が40.9ヵ月だった。HFpEF患者における心血管死または心不全増悪イベントの複合の発生は、プラセボ群が1,829例中138例(7.5%)であったのに対し、セマグルチド群は1,914例中103例(5.4%)と有意に低率であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.53~0.89、p=0.0045)。複合エンドポイントのイベントを1件予防するのに要する治療必要数(NNT)は、1年間で97、4年間で28だった。
セマグルチド群では、心不全増悪イベントのリスクも低かった(54例[2.8%]vs.86例[4.7%]、HR:0.59[95%CI:0.41~0.82]、p=0.0019)。一方、心血管死単独のリスクには有意な差を認めなかった(59例[3.1%]vs.67例[3.7%]、0.82[0.57~1.16]、p=0.25)。
投与中止に至った消化器イベントが多かった
重篤な有害事象の発現は、プラセボ群よりもセマグルチド群で少なかった(572例[29.9%]vs.708例[38.7%])。また、重篤な有害事象により試験薬の投与中止に至った患者も、セマグルチド群のほうが少なかった(142例[7.4%]vs.175例[9.6%])。試験薬の投与中止に至った消化器イベントは、セマグルチド群で多かった(213例[11.1%]vs.49例[2.7%])。
著者は、「これらのデータは、現時点で治療選択肢がほとんどないHFpEF患者において、セマグルチドが心血管死または心不全増悪イベントの複合を低減する有効かつ安全な治療法であることを支持する最も包括的なエビデンスをもたらすものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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