ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、HFmrEFとHFpEFにおける有効性は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/17

 

 左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者ではステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)により、左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)または左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者では非ステロイド型MRAにより、心血管死または心不全による入院のリスクが減少することを、英国・グラスゴー大学のPardeep S. Jhund氏らが4つの大規模臨床試験、「RALES試験」「EMPHASIS-HF試験」「TOPCAT試験」「FINEARTS-HF試験」のメタ解析の結果、報告した。MRAはHFrEF患者の入院および死亡を減少させるが、HFmrEFまたはHFpEF患者におけるベネフィットは不明であった。Lancet誌オンライン版2024年9月1日号掲載の報告。

4件の大規模臨床試験、約1万4,000例の個人データをメタ解析

 研究グループは、左室駆出率(LVEF)35%以下のHFrEF患者を対象としたRALES試験(スピロノラクトン)およびEMPHASIS-HF試験(エプレレノン)(以下、HFrEF試験)、ならびにHFmrEFまたはHFpEF患者を対象としたTOPCAT試験(LVEF45%以上、スピロノラクトン)およびFINEARTS-HF試験(LVEF40%以上、フィネレノン)(以下、HFmrEF/HFpEF試験)のデータを統合し、計1万3,846例の個別患者レベルのメタ解析を実施した。

 主要アウトカムは、心不全による初回入院または心血管死までの期間の複合、副次アウトカムは、心不全による初回入院までの期間、心不全による全入院(初回または再入院)、心不全による全入院と心血管死、心血管死、全死因死亡についてMRAの効果を推定した。血清クレアチニン、推定糸球体濾過率、血清カリウム、収縮期血圧などの安全性も評価した。統計解析では、試験と治療の相互作用を検証し、これらの集団における有効性の異質性を検討した。

ステロイド型MRAはHFrEF、非ステロイド型MRAはHFmrEFまたはHFpEFで有効

 全体としてプラセボ群に対するMRA群の、心不全による初回入院または心血管死に関するハザード比(HR)は0.77(95%信頼区間[CI]:0.72~0.83)であった。しかし、試験と治療効果との間に統計学的に有意な交互作用が認められ(交互作用のp=0.0012)、MRA群の有効性は、HFmrEF/HFpEF試験(0.87、0.79~0.95)と比較してHFrEF試験(HR:0.66、95%CI:0.59~0.73)で、より大きかった。

 試験間の治療効果の異質性は、心不全による全入院(心血管死の有無にかかわらず)、心血管死、および全死因死亡においても同様に認められた。心不全による初回入院に関するMRA群のHRは、HFrEF試験では0.63(95%CI:0.55~0.72)、HFmrEF/HFpEF試験では0.82(0.74~0.91)であった(交互作用のp=0.022)。心不全による全入院についても同様の結果であった。

 心血管死についてMRA群の有効性は、HFrEF試験では低かったが(HR:0.72、95%CI:0.63~0.82)、HFmrEF/HFpEF試験では低下はみられなかった(0.92、0.80~1.05)。全死因死亡についても同様で、プラセボ群に対するMRA群のHRは、HFrEF試験が0.73(95%CI:0.65~0.83)に対し、HFmrEF/HFpEF試験は0.94(95%CI:0.85~1.03)であった。

 安全性に関しては、すべての試験でプラセボ群と比較してMRA群で中等度(>5.5mmol/L)または重度(>6.0mmol/L)の高カリウム血症のリスクが倍増したが(オッズ比[OR]:2.27、95%CI:2.02~2.56)、重度高カリウム血症の絶対リスク(発現割合)は低く、MRA群で約2.9%、プラセボ群で約1.4%であった。一方、低カリウム血症(<3.5mmol/L)のリスクは、すべての試験でMRA群(7%)がプラセボ群(14%)と比較して半減した(OR:0.51、95%CI:0.45~0.57)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)