血友病B患者において、fidanacogene elaparvovecによる治療は定期補充療法より優れており、出血の減少と安定した血液凝固第IX因子(FIX)発現が認められた。米国・ペンシルベニア大学のAdam Cuker氏らが、13ヵ国27施設で実施した非盲検単群第III相臨床試験「BENEGENE-2試験」の結果を報告した。fidanacogene elaparvovecは、高活性のFIX-R338L変異体(FIX-Padua)を発現する遺伝子組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで、第I/IIa相試験においてFIX活性の維持が示されていた。NEJM誌2024年9月26日号掲載の報告。
血友病B患者45例にfidanacogene elaparvovecを単回投与
研究グループは、FIX製剤による定期補充療法を6ヵ月以上行うBENEGENE-1導入試験を完了した患者で、FIX活性が2%以下、FIXインヒビター陽性歴がない18~65歳の血友病B患者に、fidanacogene elaparvovecを体重1kg当たり5×10
11ベクターゲノムの用量で単回静脈内投与した。
主要エンドポイントは、投与後12週から15ヵ月までの年間出血率(治療した出血エピソードおよび未治療の出血エピソード)で、定期補充療法を受けていた導入期間と比較し、非劣性が達成された場合は優越性を評価することが事前に規定された。安全性についても評価した。
BENEGENE-1導入試験でスクリーニングを受けた316例のうち、抗AAV中和抗体が陽性であった188例(59.5%)を含む不適格患者計204例(64.6%)を除外し102例を登録した。このうち51例がBENEGENE-1導入試験を完了し、BENEGENE-2試験のスクリーニングを受け、適格患者45例がfidanacogene elaparvovecを投与された。
年間出血率は定期補充療法に対し71%減少、非劣性および優越性を検証
45例の患者背景は平均年齢33.2歳、73%が白人で、29%が標的関節を有していた。45例中、44例が15ヵ月以上の追跡調査を完了した。
すべての出血エピソードの年間出血率は、導入期間が4.42(95%信頼区間[CI]:1.80~7.05)、投与後12週から15ヵ月までの期間が1.28(95%CI:0.57~1.98)、治療差は-3.15(95%CI:-5.46~-0.83、p=0.008)で、fidanacogene elaparvovec投与により71%減少し、fidanacogene elaparvovecの定期補充療法に対する非劣性および優越性が示された。
15ヵ月時の凝固一段法SynthASilで測定した平均FIX活性は26.9%(中央値:22.9%、範囲:1.9~119.0)であった。
安全性については、38例(84%)に有害事象が認められ、主な事象はアミノトランスフェラーゼ増加であった。アミノトランスフェラーゼ増加またはFIX活性低下に対し、28例(62%)がグルココルチコイドの投与を受けた。
グルココルチコイドの投与開始までの期間は中央値37.5日(範囲:11~123)であり、投与期間中央値は95.0日(範囲:41~276)であった。投与に関連する重篤な有害事象、血栓性イベント、FIXインヒビターの発現、悪性疾患は確認されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)