非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)患者では、心臓磁気共鳴(CMR)画像におけるガドリニウム遅延造影(LGE)が全死因死亡、心血管死、不整脈イベント、心不全イベント、主要有害心イベント(MACE)の発生と有意な関連を示すが、左室駆出率(LVEF)は全死因死亡や不整脈イベントとは有意な関連がないことが、スイス・バーゼル大学病院のChristian Eichhorn氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年9月19日号で報告された。
CMR画像と有害なアウトカムの関連をメタ解析で評価
研究グループは、NIDCM患者におけるCMR画像由来の測定値と臨床アウトカムとの関連の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を行った。
医学関連データベースを用いて、2005年1月~2023年4月に発表された論文を系統的に検索した。対象は、NIDCMにおけるCMR画像由来の測定値と有害な臨床アウトカムとの関連を報告した前向きおよび後ろ向きの非無作為化診断研究とした。
主要アウトカムは、全死因死亡、心血管死、不整脈イベント、心不全イベント、MACEであった。
LVEFは、心不全イベント、MACEのリスク低下と関連
103の研究に参加したNIDCM患者2万9,687例(年齢中央値55.0歳[四分位範囲:51.6~58.5]、男性[71.1%])を解析の対象とした。
LGEの発現とその程度(1%の上昇ごと)は双方とも、全死因死亡(発現:ハザード比[HR]:1.81[95%信頼区間[CI]:1.60~2.04、p<0.001]、程度:HR:1.07[95%CI:1.02~1.12、p=0.02])、心血管死(2.43[2.13~2.78、p<0.001]、1.15[1.07~1.24、p=0.01])、不整脈イベント(2.69[2.20~3.30、p<0.001]、1.07[1.03~1.12、p=0.004])、心不全イベント(1.98[1.73~2.27、p<0.001]、1.06[1.01~1.10、p=0.02])、MACE(2.09[1.79~2.44、p<0.001]、1.03[1.02~1.04、p<0.001])と高度な関連を示した。
一方、LVEFの1%上昇ごとのリスクは、全死因死亡(HR:0.99、95%CI:0.97~1.02、p=0.47)、心血管死(0.97、0.94~1.00、p=0.05)、不整脈イベント(0.99、0.97~1.01、p=0.34)については関連がなく、心不全イベント(0.97、0.95~0.98、p=0.002)とMACE(0.98、0.96~0.99、p<0.001)はリスクが有意に低下した。
native T1緩和時間、ECV、GLSはさらなる検討が必要
native T1緩和時間の10msの上昇ごとに、不整脈イベント(HR:1.07、95%CI:1.01~1.14、p=0.04)とMACE(1.06、1.01~1.11、p=0.03)のリスクが有意に増加した。また、global longitudinal strain(GLS)の1%の低下ごとのリスクは、心不全イベント(1.06、0.95~1.18、p=0.15)とMACE(1.03、0.94~1.14、p=0.43)については関連がなかった。
データが限られていたため、native T1緩和時間、GLS、心筋細胞外容積分画(ECV)については、死亡アウトカムに関する確定的な解析はできなかった。
著者は、「native T1緩和時間、ECV、GLSを用いたリスク層別化については、さらなる検討を要する」「小規模な試験の影響により、要約推定値に過大評価が生じた可能性がある」としたうえで、「LVEFは不整脈および死亡のエンドポイントと関連しておらず、NIDCM患者の予防的植込み型除細動器(ICD)装着のリスク層別化におけるLVEFの中心的な役割に疑問が生じる」とまとめている。
(医学ライター 菅野 守)