アルコール使用は、非感染性疾患の予防および修正可能な因子であり、飲酒量によっては心血管系に複雑な影響を及ぼす。英国・バーミンガム大学のEd Day氏らは、アルコール使用と心血管疾患との関連性について検討した。Addiction誌2019年9月号の報告。
主な結果は以下のとおり。
・観察研究やプロスペクティブ研究では、少量のアルコールを摂取する人は、禁酒者と比較し、心血管および全死亡リスクが一貫して低いことが示唆されている(J曲線)。
・潜在的なベネフィットの最大値は、女性の場合、標準ドリンクサイズ0.5~1杯/日(純エタノール:7~14g)で全死亡リスクが18%低下(95%信頼区間[CI]:13~22%)、男性の場合、1~2杯/日で全死亡リスクが17%低下(95%CI:15~19%)であった。
・しかし、全体的なアルコールの有害作用は有益な効果をはるかに上回り、エタノールの平均消費量10g/日で早期死亡リスクが確実に増加する。
・血圧は定期的なアルコール摂取により用量依存的に上昇し、高血圧(140/90mmHg超)の相対リスクは、エタノール50g/日で1.7、100g/日で2.5であった。
・わずか1ヵ月の禁酒により、血圧値の低下が期待できる。
・過度なアルコール摂取は、心臓の機能が正常な人であっても、急性心臓不整脈の発症と関連が認められる。
・心房細動は、慢性的な大量アルコール摂取に関連する最も一般的な不整脈であり、アルコール量が14g/日を超えると、その後1杯(エタノール14g)当たり相対リスクが10%増加する。
・エタノールとその代謝物は心筋細胞に毒性を有しており、アルコール性心筋症は非虚血性拡張型心筋症の全体の1/3を占める。
著者らは「アルコール摂取が少量ではない人に対するスクリーニングと簡便な介入により、心血管合併症発症の予防が可能である。心血管疾患を有する人は、アルコール摂取量を減らすことで改善が期待できる。アルコール性心筋症患者では、治療を最適化するため、禁酒を目指すべきである」としている。
(鷹野 敦夫)