ルテチウム-177 (Lu-PSMA-617)は、タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)既治療の前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性で転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ARPI変更群と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に延長し、安全性プロファイルも良好であることが認められた。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのMichael J. Morris氏らPSMAfore Investigatorsが、北米および欧州の74施設で実施された第III相無作為化非盲検比較試験「PSMAfore試験」の主要解析(第1回中間解析)と最新解析(第3回中間解析)の結果を報告した。Lu-PSMA-617は、ARPIおよびタキサン既治療のmCRPC患者のrPFSおよび全生存期間(OS)を延長することが示されていた。Lancet誌2024年9月28日号掲載の報告。
1種類のARPIで進行したタキサン未治療のPSMA陽性mCRPC患者が対象
研究グループは、18歳以上でタキサン系薬剤による治療歴がなく、1種類のARPI(アビラテロン、エンザルタミド、ダロルタミドまたはアパルタミド)による治療後に進行したPSMA陽性mCRPC患者(ECOG PSは0~1)を、Lu-PSMA-617群(7.4GBq[200mCi]±10%を6週ごとに6サイクル静脈内投与)、またはARPI変更群(アビラテロンまたはエンザルタミドに変更)に1対1の割合で無作為に割り付けた。
ARPI変更群では、盲検下独立中央判定(BICR)により画像診断に基づく進行が確認された時点でLu-PSMA-617へのクロスオーバーを可とした。
主要評価項目は、BICRによるPCWG3-modified
38 RECIST v1.1に基づくrPFSで、ITT解析集団において評価された。主な副次評価項目は、OS、安全性などであった。
ARPI変更と比較してLu-PSMA-617でrPFSが有意に延長
2021年6月15日~2022年10月7日に、585例がスクリーニングを受け、このうち適格基準を満たした468例が、Lu-PSMA-617群(234例)またはARPI変更群(234例)に無作為に割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群でほぼ同様であった。ARPI変更群のうち、134例(57%)がクロスオーバーされLu-PSMA-617の投与を受けた。
主要解析(第1回データカットオフ、追跡期間中央値7.26ヵ月[四分位範囲[IQR]:3.38~10.55])において、rPFS中央値はLu-PSMA-617群9.30ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.77~推定不能)、ARPI変更群5.55ヵ月(4.04~5.95)、ハザード比(HR)は0.41(95%CI:0.29~0.56、p<0.0001)であった。
第3回中間解析(第3回データカットオフ、追跡期間中央値24.11ヵ月[IQR:20.24~27.40])では、rPFS中央値はLu-PSMA-617群11.60ヵ月(95%CI:9.30~14.19)、ARPI変更群5.59ヵ月(4.21~5.95)、HRは0.49(95%CI:0.39~0.61)であった。
安全性については、Grade3以上の有害事象の発現率はLu-PSMA-617群36%(81/227例)、ARPI変更群48%(112/232例)であり、Lu-PSMA-617群で低かった。Grade5(死亡に至った有害事象)はLu-PSMA-617群4例(2%、いずれも治療に関連なしと判定)、ARPI変更群5例(2%、うち1例が治療に関連ありと判定)に認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)