転移を有するドセタキセル既治療の去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対し、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的としたルテチウム177(Lu-PSMA-617)は、カバジタキセルと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのMichael Hofman氏から発表された。
PSMA標的治療薬のLuPSMA群でPFSの有意な延長
今回のPSMA標的治療薬の効果の発表は、オーストラリアで実施されたオープンラベルの無作為化比較第II相TheraP試験の生存に関する解析結果である。
・対象:ドセタキセル治療後に病勢進行を来したmCRPC症例200例
(PETでPSMA高発現であり、同一の病変部位でFDG-PET陽性だがPSMA陰性といった不一致がない症例)
・試験群:PSMA標的治療薬Lu-PSMA-617を6週間ごと6サイクル投与(LuPSMA群:99例)
・対照群:カバジタキセル20mg/m
2を3週間ごと10サイクル投与(Caba群:101例)
・評価項目:
[主要評価項目] PSA奏効率
[副次的評価項目] PFS、奏効率、安全性など
転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対するPSMA標的治療薬の効果を解析した主な結果は下記のとおり。
・既報では、PSA奏効率はLuPSMA群66%対Caba群37%、奏効率は49%対24%、Grade3/4の有害事象は33%対53%といずれもLuPSMA群で良好な結果となっていた。
・データカットオフ2020年12月時点でのPFSは、ハザード比(HR)は0.62(95%信頼区間[CI]:0.45~0.85)、p=0.0028と、LuPSMA群で有意な延長が見られた。
・データカットオフ2021年12月時点、観察期間中央値36ヵ月でのOSは、HR0.97(95%CI:0.70~1.4)、p=0.99と両群間に有意な差は認められなかった。
・LuPSMA群の後治療には32%にカバジタキセルが、Caba群の後治療では20%にLu-PSMA-617が投与されていた。
・画像診断のスクリーニング時にPSMA低発現などで除外された症例61例を加えて、探索的にOSを検討したが、除外症例群は試験登録群に比し、予後不良であった。
・観察期間中央値3年時点においても、新たな安全性の懸念は出てこなかった。
演者は「Lu-PSMA-617は、カバジタキセルと同等のOSを示し、かつPSA奏功率、PFS、安全性ではカバジタキセルより優れる治療法である。」と結んだ。
(ケアネット)