マルチスライスCTを使ったCTコロノグラフィ(CTC)は「仮想内視鏡」などと呼ばれ、内視鏡やバリウムの挿入が不要なため、結腸直腸癌のスクリーニングにおける新たな非侵襲性の選択肢として注目されている。しかしながら、平坦な早期癌や無症候性の小さな病変検出には精度に難があるのではと言われていたが、エビデンスデータを求めてメイヨー・クリニックのC. Daniel Johnson氏らが精度について調査を行っている。NEJM誌2008年9月18日号より。
無症状の患者2,600例をスクリーニング
15施設から50歳以上の無症状の参加者2,600例を集め試験が行われた。CTC撮像は、標準の腸管前処置(液体を使った腸内洗浄と炭酸ガス注入)を施し、16列以上のマルチスライスCTを用いて行った。
CTCに習熟した放射線科医が、直径5mm以上の病変は全て報告。各センターで、確立した臨床プロトコルに従って光学式大腸内視鏡検査と病理組織検査を行い、それらを標準試料として用いた。
主要エンドポイントは、内視鏡検査で検出され組織学的にも確かめられた大きな腺腫と腺癌(直径10mm以上)がCTCで検出されること。より小さな結腸直腸の病変(直径6~9mm)の検出についても評価を行った。
10mm以上の病変の検出感度は90%
完全なデータが得られたのは2,531例(97%)。
大きな腺腫と癌に関する患者ごとの平均推定値(±SE)は、CTC感度0.90±0.03、特異度0.86±0.02、陽性的中率0.23±0.02、陰性的中率0.99±<0.01、被験者特性(ROC)曲線下の面積0.89±0.02であった。感度が0.90(すなわち90%)とは、CTCが直径10mm以上の病変を、10%の患者で検出に失敗したことを示している。
大きな腺腫または癌におけるポリープ当たりの感度は0.84±0.04だった。直径6mm以上の腺腫の患者当たりの検出感度は0.78だった。
研究グループはこれらの所見から、結腸直腸癌の平均リスクを有するスクリーニング患者に対するCTCの役割については、発表されたデータを補強するものだと述べている。
(武藤まき:医療ライター)