父親の精子形成期におけるメトホルミンの使用は、子の臓器特異的奇形を含む先天奇形とは関連しないことが、ノルウェーおよび台湾の一般住民を対象とした全国規模のコホート研究において示された。国立台湾大学のLin-Chieh Meng氏らが報告した。先行研究では、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形のリスクとの関連が示されていた。著者は、「今回の研究の結果、メトホルミンは子供をもうける予定のある2型糖尿病男性において、血糖管理のための最初の経口薬として適切であると考えられる」とまとめている。BMJ誌2024年10月16日号掲載の報告。
ノルウェー62万例、台湾256万例の子供と父親のデータを解析
研究グループは、ノルウェーの出生登録、処方箋データベース、患者登録および医療費償還払いデータベース、ならびに台湾の出生証明書申請データベース、国民健康保険データベースおよび母子保健データベースを用いた。ノルウェーのコホートでは2010~21年まで、台湾のコホートでは2004~18年までに単胎妊娠で出生した子供のうち、精子形成期(妊娠の3ヵ月前)の父親のデータがある子供それぞれ61万9,389例および256万3,812例を特定した。
主要アウトカムは、先天奇形、副次アウトカムは臓器特異的奇形で、欧州先天奇形サーベイランス(EUROCAT)のガイドラインに従って分類し、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形リスクとの関連について解析した。
相対リスクは、補正前解析、父親が2型糖尿病と診断されている集団に限定した解析、ならびに糖尿病の重症度やその他の交絡因子を補正するため父親が2型糖尿病の集団に限定し、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた解析により推定した。また、遺伝的因子とライフスタイル因子を考慮するために、兄弟姉妹のマッチング比較を行った。さらに、ノルウェーと台湾のデータの相対リスク推定値を、ランダム効果メタ解析を用いて統合した。
父親が2型糖尿病の交絡因子補正後解析では、メトホルミン服用と先天奇形に関連なし
ノルウェーのコホートでは、61万9,389例のうち2,075例(0.3%)、台湾のコホートでは256万3,812例のうち1万5,276例(0.6%)の子供の父親が、精子形成期にメトホルミンを使用していた。
先天奇形は、ノルウェーのコホートでは、父親が精子形成期にメトホルミンを使用していなかった子供で2万4,041例(3.9%)、使用していた子供で104例(5.0%)に認められ、台湾のコホートではそれぞれ7万9,278例(3.1%)および512例(3.4%)であった。
補正前解析では、父親のメトホルミン使用は先天奇形のリスク増加と関連していた(補正前相対リスクはノルウェーで1.29[95%信頼区間[CI]:1.07~1.55]、台湾で1.08[0.99~1.17])。
しかし、この関連は交絡因子の補正に従い減弱した。2型糖尿病の父親に限定した解析での相対リスクは、ノルウェーで1.20(95%CI:0.94~1.53)、台湾で0.93(0.80~1.07)、2型糖尿病の父親限定の傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析ではそれぞれ0.98(0.72~1.33)、0.87(0.74~1.02)で、プール推定値は0.89(0.77~1.03)であった。
臓器特異的奇形は、父親のメトホルミン使用と関連していなかった。これらの所見は、兄弟姉妹をマッチさせた比較や感度分析においても一貫していた。
(ケアネット)