オピオイド使用障害(OUD)に対するオピオイド作動薬治療(OAT)のレジメンに関する国際的なガイドラインでは、競合する治療選択肢の有効性の比較に関するエビデンスが限られているため、依然として意見が分かれているという。カナダ・サイモンフレーザー大学のBohdan Nosyk氏らは、メサドンと比較してブプレノルフィン/ナロキソンは、治療中止のリスクが高く、死亡率は両群で同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月17日号で報告された。
ブリティッシュコロンビア州の後ろ向きコホート研究
研究グループは、OUDの治療におけるブプレノルフィン/ナロキソンとメサドンの有用性を比較評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]などの助成を受けた)。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州の9つの健康管理データベースを用いて患者のデータを収集した。年齢18歳以上、オピオイド依存と診断され、2010年1月1日~2020年3月17日にブプレノルフィン/ナロキソンまたはメサドンの新規処方を受けた全患者を対象とした。治療開始時に収監中、妊娠中、がん緩和療法中の患者は除外した。
主要アウトカムは、24ヵ月以内の治療中止(投薬中断日数が、ブプレノルフィン/ナロキソンは6日以上、メサドンは5日以上継続した場合と定義)および全死因死亡とした。
initiator解析で24ヵ月治療中止率が高かった
研究期間中にOATの初回投与を受けた新規処方者3万891例(ブプレノルフィン/ナロキソン群39%、男性66%、年齢中央値33歳)をinitiator解析(ベースラインの交絡因子を調整するために傾向スコアと操作変数を用いた)の対象とし、このうち1週目の投与量が最適でなかった患者を除いた2万5,614例をper-protocol解析(ガイドライン推奨用量でのアウトカムを比較するために打ち切り法を用いた)の対象とした。
新規処方者のinitiator解析では、メサドン群に比べ、ブプレノルフィン/ナロキソン群で24ヵ月時の治療中止率が高かった(88.8% vs.81.5%、補正後ハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.53~1.63]、補正後リスク差:10%[95%CI:9~10])。また、per-protocol解析において至適用量で評価した治療中止率の推定値の変化は限定的なものであった(42.1% vs.30.7%、1.67[1.58~1.76]、22%[16~28])。
死亡リスクは両群とも低い
投与期間中の24ヵ月時の死亡率に関するper-protocol解析では、新規処方者(ブプレノルフィン/ナロキソン群0.08%[10件]vs.メサドン群0.13%[20件]、補正後HR:0.57[95%CI:0.24~1.35])、および新規・既存処方者(prevalent new user)(0.08%[20件]vs.0.09%[45件]、0.97[0.54~1.73])のいずれにおいても両群とも値が低く、曖昧な結果が示された。
これらの結果は、フェンタニル導入後やさまざまな患者サブグループを通じて、また感度分析でも一貫していた。
著者は、「北米などの地域では、より強力な合成オピオイドの使用が増加し続けていることから、治療中止のリスクを軽減するために、OUD患者の治療のあらゆる側面に関する診療ガイドラインはその再考が求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)