若年透析患者の腎移植アクセス、施設スタッフ数と関連/JAMA

米国では、透析施設によって患者対スタッフ比(看護師またはソーシャルワーカー1人当たりの患者数)が大きく異なり、この施設間の差が高齢患者のアウトカムに影響を及ぼすことが知られている。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAlexandra C. Bicki氏らは今回、青少年および若年成人の透析患者について調査し、患者対スタッフ比が低い施設と比較して高い施設は腎移植待機リスト登録率および腎移植率が低く、とくに22歳未満の患者で顕著であることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月23日号で報告された。
米国の12~30歳の患者の後ろ向きコホート研究
研究グループは、患者対スタッフ比が青少年および若年成人の透析患者における腎移植へのアクセスと関連するかの検証を目的に、後ろ向きコホート研究を行った(American Kidney Fund Clinical Scientist in Nephrology fellowshipなどの助成を受けた)。解析には、米国の全国的な末期腎臓病のレジストリであるUS Renal Data Systemのデータを用いた。対象は、2005年1月1日~2019年12月31日に全米8,490施設で透析を開始した12~30歳の患者であった。
透析施設を、患者対看護師比および患者対ソーシャルワーカー比の四分位数で4群に分類した。Fine-Grayモデルを用い、死亡の競合リスクを考慮したうえで、四分位別の腎移植待機者登録および腎移植の発生率を評価した。
スタッフの担当患者数が多いと腎移植率が低下
5万4,141例(透析開始時の年齢中央値25歳[四分位範囲[IQR]:21~28]、男性54.4%)を解析の対象とした。74.5%が透析開始時に22歳以上で、84.7%が血液透析を受けていた。患者対スタッフ比中央値は、看護師が14.4(IQR:10.3~18.9)、ソーシャルワーカーは91.0(65.2~115.0)だった。追跡期間中央値2.6年の時点で、39.9%が腎移植を受け、17.9%が移植前に死亡した。患者対看護師比が第1四分位(<10.3)群の施設に比べ、第4四分位(>18.9)群の施設では、腎移植待機者登録率には差がなかった(サブハザード比[SHR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.93~1.01)が、腎移植率は低かった(0.86、0.82~0.91)。
また、患者対ソーシャルワーカー比が第1四分位(<65.2)群に比べ、第4四分位(>114.7)群では、腎移植待機者登録率が低く(SHR:0.95、95%CI:0.91~0.99)、腎移植率(0.85、0.81~0.89)も低かった。
透析施設のスタッフ配置の改善が重要
腎移植率については、2つのスタッフ比はともに、透析開始時の年齢と交互作用がみられ、22歳以上で透析を開始した患者(患者対看護師比の第1四分位群対第4四分位群のSHR:1.00[95%CI:0.94~1.06]、患者対ソーシャルワーカー比の同:0.96[0.91~1.02])と比較して、22歳未満で開始した患者(0.71[0.65~0.78]、0.74[0.68~0.80])でより顕著に低かった。著者は、「透析施設のスタッフの比率が若年患者の腎移植アクセスに重要な影響を及ぼし、看護師やソーシャルワーカーによる支援の不足が、若年患者が移植の評価を受ける際の支障となる可能性が示唆された」「若年透析患者が、より早期に腎移植を受けられるようにするためには、透析施設におけるスタッフ配置の改善が重要と考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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