駆出率が低下した心不全(HFrEF)を有する患者において、SGLT-2阻害薬の使用者は非使用者と比較して、全死因死亡リスクが25%低かった。デンマーク・国立血清学研究所(SSI)のHenrik Svanstrom氏らが、同国心不全レジストリ(Danish Heart Failure Registry)と国民登録簿(Danish national registers)を結び付けて解析した非介入データベース試験の結果を報告した。臨床試験では、SGLT-2阻害薬は糖尿病の有無にかかわらず、駆出率が低下した心不全患者の病状悪化および死亡のリスクを低下することが示されている。しかし、臨床試験のような管理下にない幅広い心不全患者集団における、SGLT-2阻害薬の有効性はほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、実臨床において、および糖尿病患者と非糖尿病患者を含むすべての重要な臨床サブグループにおいて、SGLT-2阻害薬の有効性を支持するものであった」とまとめている。BMJ誌2024年11月6日号掲載の報告。
対象は45歳以上、左室駆出率40%以下の心不全患者
研究グループは、2020年7月~2023年6月のデータを用いて、駆出率が低下した心不全を有する患者におけるSGLT-2阻害薬の使用と全死因死亡リスクとの関連を調べた。
対象は、45歳以上、左室駆出率40%以下の心不全患者とした。
主要アウトカムは全死因死亡で、SGLT-2阻害薬による治療開始・継続群と、SGLT-2阻害薬非使用でほかの標準的な心不全治療薬による治療継続群を比較した。副次アウトカムは心血管死または心不全による入院の複合およびそれぞれの発生とした。傾向スコアに基づく逆確率治療重み付け(IPTW)で補正したCox回帰法によりハザード比(HR)を算出して評価した。
糖尿病患者vs.非糖尿病患者の死亡抑制効果は同等
SGLT-2阻害薬(ダパグリフロジン79%、エンパグリフロジン21%)を開始していた6,776例と、SGLT-2阻害薬非使用でほかの標準的な心不全治療薬を継続使用していた1万4,686例が試験に組み入れられた。
SGLT-2阻害薬使用群は、70%が男性で、平均年齢は71.2歳(SD 10.6)、20%が2型糖尿病を有していた。
追跡期間中の死亡は、SGLT-2阻害薬使用群で374例(死亡率5.8/100人年)、非使用群で1,602例(8.5/100人年)だった。全死因死亡の重み付けHRは0.75(95%信頼区間[CI]:0.66~0.85)であり、死亡の重み付け発生率(100人年当たり)の群間差は-1.6(95%CI:-2.5~-0.8)であった。
心血管死または心不全による入院の複合のHRは0.94(95%CI:0.85~1.04)、心血管死のHRは0.77(0.64~0.92)、心不全による入院のHRは1.03(0.92~1.15)であった。
全死因死亡の重み付けHRは、糖尿病患者(0.73[95%CI:0.58~0.91])と非糖尿病患者(0.73[0.63~0.85])で同等だった(p=0.99)。
(ケアネット)