糖尿病治療による心血管および心不全リスクへの効果は試験により大きく異なる。今回、医学研究所北野病院(大阪市)の長谷部 雅士氏らがランダム化心血管アウトカム試験35試験のメタ解析およびメタ回帰分析により、糖尿病治療は主要有害心血管イベント(MACE)をHbA1cに依存して減少させる一方、心不全リスクは体重に依存して減少することがわかった。Cardiovascular Diabetology誌2023年3月19日号に掲載。
本研究では、2023年1月25日までPubMedとEMBASEで2型糖尿病または前糖尿病患者におけるMACEと心不全アウトカムの両方を報告する糖尿病治療(生活習慣改善、薬剤)のすべてのランダム化比較心血管アウトカム試験を検索し、35試験(計25万6,524例)を同定した。ランダム効果メタ解析に続いてメタ回帰分析を行い、各アウトカムに対するHbA1cまたは体重減少の影響を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・全体として、糖尿病治療はMACEを9%減少させた(リスク比[RR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.88~0.94、p<0.001、I2=36.5%)。
・メタ回帰分析では、HbA1c減少が1%大きくなるごとに、MACEのRRが14%減少(95%CI:4~24、p=0.010)したが、体重変化はMACEのRRと関連していなかった。
・HbA1c減少に関連するMACEリスク減少は、ベースラインの動脈硬化性心血管疾患の有病率が高い試験でより高かった一方、糖尿病治療は心不全リスクに有意な効果を示さなかった(RR:0.95、95%CI:0.87~1.04、p=0.28、I2=75.9%)。
・糖尿病治療別の解析では、SGLT2阻害薬による心不全リスク減少が最も大きかった(RR:0.68、95%CI:0.62~0.75、p<0.001、I2=0.0%)。
・メタ回帰分析では、HbA1c減少ではなく、体重1kg減少ごとに心不全のRRが7%減少した(95%CI:4~10、p<0.001)が、有意な残存異質性(p<0.001)が認められ、HbA1cや体重減少では説明できないほどSGLT2阻害薬が心不全を減少させていた。
著者らは注目すべきこととして、SGLT2阻害薬がHbA1cや体重の減少を越えて心不全にクラス特異的な効果を示したことを挙げている。
(ケアネット 金沢 浩子)