急性期脳出血、中医薬FYTF-919は有効性示せず/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/26

 

 FYTF-919は、中国で脳出血の治療に用いられている主に4種の生薬から成る経口薬で、血腫の除去を促進し、死亡率を低下させ、脳出血後の回復を改善する可能性が示唆されているが、エビデンスは十分でないとされる。中国・広州中医薬大学のJianwen Guo氏らCHAIN investigatorsは、「CHAIN試験」において、本薬には中等症から重症の脳出血患者の機能回復、生存、健康関連QOLを改善する効果はないことを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年11月12日号に掲載された。

中国の無作為化プラセボ対照比較試験

 CHAIN試験は、中国の26の病院で実施した実践的な二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年11月~2023年12月に参加者の無作為化を行った(Key-Area Research and Development Program of Guangdong Provinceの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、症状発現(または最終健常確認)から48時間以内の症候性の非外傷性脳出血(脳画像で確認)と診断され、中等度~重度の神経障害(NIHSSスコアが8点以上、またはGCSスコアが7~14点)を有する患者を対象とした。

 被験者を、FYTF-919の経口液剤33mL(嚥下障害のある場合は経鼻胃管で25mL)またはプラセボのいずれかを、24時間かけて投与(8時間ごと[経鼻胃管の場合は6時間ごと]に食後30分以上経過してから投与)し、これを28日間継続する群に無作為に割り付けた。

 有効性の主要アウトカムは、90日時点での効用加重修正Rankin尺度(mRS)のスコアとした。mRSは7段階の順序尺度で、0~1点は症状の有無を問わず機能障害がなく良好なアウトカムを示し、2~5点は機能障害と他者への依存度が増加し、6点は死亡と定義した。

副次アウトカムにも差はない

 1,641例を修正ITT解析に含め、FYTF-919群に815例、プラセボ群に826例を割り付けた。全体の平均年齢は67.1(SD 12.0)歳で、34.2%が女性であった。出血部位は1,346例(83.7%)が大脳基底核または視床であり、ベースラインのNIHSSスコア中央値は15点(四分位範囲:10~20)、30.3%が早期減圧術を受け、発症から無作為化までの時間中央値は15.3時間(7.4~25.8)、平均収縮期血圧は172(SD 29)mmHgだった。

 1,242例(75.7%)が試験薬の80%以上を服用し、994例(60.6%)が28日までに試験薬をすべて服用した。90日の時点での効用加重mRSスコアの平均値は、FYTF-919群が0.44点、プラセボ群も0.44点であり、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:0.01点、95%信頼区間:-0.02~0.04、p=0.63)。調整分析、感度分析、per-protocol解析でも結果は変わらなかった。

 副次アウトカム(死亡または機能障害[mRS:4~6]、死亡、機能障害[mRS:4~5]、Barthel指数、EQ-5D-5L効用値、肺炎、28日までの退院など)にも両群間に差はなかった。

重篤な有害事象の頻度も同程度

 全体として、有害事象(FYTF-919群79.8% vs.プラセボ群80.5%)および重篤な有害事象(41.5% vs.43.3%[90日間の追跡期間中])の頻度に有意差はなかった。とくに注目すべき有害事象(13.6% vs.9.4%、p=0.01)はFYTF-919群で多く、このうち下痢がそれぞれ10.6%および6.5%に発現した。

 著者は、「両群間で重篤な有害事象の頻度に有意差がなかったことから、FYTF-919は安全と考えられる」「これらの結果は、FYTF-919に効果がないという決定的なエビデンスを提供するものである」とし、「この研究は、中国ですでに広く使用されている伝統的な中医薬の有用性の評価において、大規模で方法論的に厳格な無作為化比較試験が実行可能であることを示している」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)