一過性脳虚血発作(TIA)と軽度脳卒中は再発リスクが高く、英国国立医療技術評価機構(NICE)では脳卒中戦略として、発症後24時間以内の診察が必要と指導している。しかし2004年に英国で導入された、プライマリ・ケアの新しい一般医療保険サービス制度(GMS:general medical services)では、開業医が患者を診察するべき「責務」は、月曜~金曜日の午前8時~午後6時半と規定するものだった。最近、夜間・週末の医療アクセスを改善する契約変更が提案されたが、臨床転帰への影響は不明であることから、オックスフォード大学のDaniel S Lasserson氏らが、医師の開業時間と発症後に連絡がつくまでの時間を検証。結果は、「戦略達成には、プライマリ・ケアへのアクセス改善が必要」と報告するに至るものだった。BMJ誌2008年9月18日号より。
9施設の患者9万1千例を4年間追跡
前向きコホート研究「Oxford vascular study」としてデザインされた本研究は、一般開業医の診療時間と、TIAおよび軽度脳卒中の発症から24時間以内に受診可能性について、オックスフォード近郊の一般開業医9施設を対象に、2002年4月1日から2006年3月31日まで患者9万1千例を追跡したもの。主要評価項目は、TIAか軽度脳卒中が、夜間・週末(時間外)に発症した場合と、診療時間に発症した場合。
速やかな治療を受けられなかった13例は再発
TIA 359例と軽度脳卒中434例のうち、診療時間中に発症した患者が開業医と連絡をつけるまでの時間の中央値(四分位数間領域)は4.0時間(1.0~45.5時間)だった。診療時間中に発症した患者の68%は、24時間以内に連絡がついていた。
しかし時間外に発症した場合、開業医に連絡した時間の中央値(四分位数間領域)は、GMS規定の登録医へ連絡をつけようとした患者の場合は24.8時間(9.0~54.5時間)だった。これに対して緊急医療サービスを利用した者は1.0時間(0.3~2.6時間)だった(P<0.001)。時間外に発症して登録医を待った患者が、24時間以内に診察を受けられた割合は、月曜~金曜日の70%に対して、日曜日は33%、土曜日はゼロで、平日より週末のほうが明らかに少なかった(オッズ比:0.10、95%信頼区間:0.05~0.21)。
時間外に発症し、救急治療を受けられなかった患者のうち13例は、治療を受ける前に再発していた。あるプライマリ・ケアセンターが無休で診療時間を午前8時~午後8時とし、登録医による処置を待つ患者73例を収容したところ、それら患者グループの受診遅れの中央値は50.1時間から4.0時間となり、24時間以内に連絡をした患者は34%から68%に増加した。
Lasserson氏は「一般開業医の診療時間は、TIAと軽度脳卒中を発症した患者のヘルスケアに影響し、現状では診断の遅れを増加させる。脳卒中国家戦略の達成には、救急ケアについての公衆衛生教育の充実と、プライマリ・ケアへのアクセス改善が必要」と結論した。