全身療法による前治療歴のない、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を示す転移を有する大腸がん患者の治療において、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象が少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らCheckMate 8HW Investigatorsが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年11月28日号に掲載された。
国際的な無作為化第III相試験の中間解析
CheckMate 8HW試験は、日本を含む23ヵ国121施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に患者の無作為化を行った(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。
年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんで、各施設の検査でMSI-HまたはdMMRを示し、さまざまな治療ライン数の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ療法、ニボルマブ単独療法、化学療法を受ける群に2対2対1の割合で無作為に割り付けた。
主要評価項目は以下の2つとし、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者を対象とした。(1)1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法または化学療法を受けた群におけるPFS、(2)転移病変に対する全身療法の有無を問わずに、ニボルマブ+イピリムマブ療法またはニボルマブ単独療法を受けた群におけるPFS。
今回の事前に規定された中間解析では、(1)の解析結果が報告された。
境界内平均生存期間が10.6ヵ月延長
転移病変に対する全身療法を受けていない303例を、ニボルマブ+イピリムマブ群に202例(年齢中央値62歳、女性53%)、化学療法群に101例(同65歳、55%)割り付けた。255例(ニボルマブ+イピリムマブ群171例[85%]、化学療法群84例[83%])が、中央判定でMSI-HまたはdMMRの腫瘍を有していた。
追跡期間中央値31.5ヵ月(範囲:6.1~48.4)の時点で、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者におけるPFS中央値は、化学療法群が5.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.4~7.8)であったのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ群は未到達(38.4~評価不能)と有意に優れた(p<0.001[両側層別log-rank検定を用いて算出したPFSの群間差])。
また、Kaplan-Meier曲線による12ヵ月無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が79%(95%CI:72~84)、化学療法群は21%(11~32)であり、24ヵ月無増悪生存率はそれぞれ72%(64~79)および14%(6~25)であった。
24ヵ月時の境界内平均生存期間(RMST)は、化学療法群よりニボルマブ+イピリムマブ群で10.6ヵ月(95%CI:8.4~12.9)延長し、これはPFSの主解析の結果と一致した。
新たな安全性に関する懸念はみられない
ニボルマブ+イピリムマブ群では、そう痒(22%)、下痢(21%)、甲状腺機能低下症(16%)、無力症(14%)、化学療法群では下痢(51%)、悪心(47%)、無力症(35%)、食欲減退(23%)の頻度が高かった。
Grade3または4の治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23%、化学療法群で48%に発現した。試験薬の投与中止に至った全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ16%および32%に認めた。また、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。
著者は、「本試験で得られたPFSの結果は、非無作為化CheckMate 142試験における1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法のデータと一致しており、MSI-HまたはdMMRを示す転移を有する大腸がん患者の治療において、この免疫チェックポイント阻害薬2剤併用療法の使用を支持するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)