リンパ節転移陰性の浸潤性乳がん、腋窩手術省略vs.センチネルリンパ節生検/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/30

 

 リンパ節転移陰性のcT1またはcT2浸潤性乳がん患者では、腋窩郭清術を省略してもセンチネルリンパ節生検に対して非劣性であった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏らがドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」の追跡期間中央値6年の解析結果を報告した。乳房温存療法の一環として、生存率を損なうことなく腋窩手術を省略できるかどうかは不明のままであった。NEJM誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

主要評価項目は無浸潤疾患生存期間

 研究グループは、18歳以上で浸潤性乳がんを有し乳房温存術を受ける予定の女性で、腫瘍径≦5cmのcT1またはcT2、かつ臨床的評価および画像診断でリンパ節転移陰性(cN0、iN0)の患者を、腋窩手術省略群とセンチネルリンパ節生検群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、センチネルリンパ節生検群でセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、腋窩リンパ節郭清実施群と非実施群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 本論では、初回無作為化の結果が報告された。主要評価項目は、初回無作為化における無浸潤疾患生存期間(iDFS)で、per-protocol解析を行った。腋窩手術省略群のセンチネルリンパ節生検群に対する非劣性は、5年iDFS率が85%以上で、浸潤性疾患または死亡のハザード比の95%信頼区間(CI)の上限が1.271未満と規定した。

腋窩手術省略はセンチネルリンパ節生検に対して非劣性

 2015年9月~2019年4月に5,502例が初回無作為化を受け、4,858例がper-protocol解析集団となった(腋窩手術省略群962例、センチネルリンパ節生検群3,896例)。

 追跡期間中央値73.6ヵ月において、per-protocol集団における5年iDFS率は腋窩手術省略群91.9%(95%CI:89.9~93.5)、センチネルリンパ節生検群91.7%(90.8~92.6)であった。ハザード比は0.91(95%CI:0.73~1.14)であり、事前に規定された非劣性マージンを満たした。

 主要評価項目のイベント(浸潤性疾患の発症または再発、あるいは死亡)は525例(10.8%)に発生した。腋窩手術省略群とセンチネルリンパ節生検群の間で、腋窩再発発生率(1.0% vs.0.3%)、および死亡率(1.4% vs.2.4%)について、明らかな違いが認められた。

 安全性については、腋窩手術省略群はセンチネルリンパ節生検群と比較して、リンパ浮腫の発現率が低く、腕の可動域が大きく、腕や肩の動きに伴う痛みが少なかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 下村 昭彦( しもむら あきひこ ) 氏

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院

乳腺・腫瘍内科/がん総合内科