尊厳死を選択した末期患者の中には、うつが原因の例も

提供元:ケアネット

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公開日:2008/11/07

 



医師による死亡支援を求める末期患者におけるうつの有病率は高くはないが、現行のオレゴン州の尊厳死法下ではうつの影響で致死的薬剤の処方を選択した患者を保護できない可能性があることが、同州で実施された横断的調査で明らかとなった。1997年、同州では医師による死亡支援が合法化された。しかし、末期患者が死亡支援を求める決断をする背景には、治療可能な精神疾患の影響も考えられるため議論が続いているという。アメリカPortland在郷軍人局医療センターのLinda Ganzini氏が、BMJ誌2008年10月25日号(オンライン版2008年10月8日号)で報告した。

死亡支援を求める末期患者におけるうつ、不安の有病率を調査




研究グループは、医師に死亡支援を求める末期患者におけるうつおよび不安の有病率の調査を目的とした横断的研究を実施した。対象は、医師による死亡支援を求めているか、あるいは死亡支援組織と連絡を取っているオレゴン州在住の末期患者。

登録された58例は、平均年齢66歳、女性31例、既婚者22例、ホスピス入所者21例であった。44例が末期癌患者、7例は筋萎縮性側索硬化症患者であり、面接時に明確な死亡支援を表明したのは46例であった。

主要評価項目は、「病院不安およびうつスケール(HADS)」あるいは「精神疾患の分類と診断マニュアル(DSM)」の臨床面接におけるうつあるいは不安の診断とした。

致死性薬剤の処方を受けた18例中うつは3例、いずれも服薬で死亡




58例中うつの「事例性(caseness)」の判定基準を満たした患者が15例、不安の事例性判定基準を満たしたのは13例であった。

試験終了までに42例が死亡した。そのうち尊厳死法下に致死性薬剤の処方を受けていたのは18例で、実際に薬剤の経口摂取によって死亡したのは9例であった。

処方を受けた18例のうち15例はうつの判定基準を満たさなかった。残りのうつと診断された3例は、いずれも面接から2ヵ月以内に薬剤を服用して死亡した。

著者は、「死亡支援を求めたオレゴン州在住の末期患者のうち、うつ状態と診断された患者の割合は6例に1例と多くはないが、現行の尊厳死法下ではうつの影響で致死性薬剤の処方を選択した患者を保護できない可能性がある」と結論している。なお、「驚いたことに、死の希求度は致死性薬剤の処方を受けた患者よりも受けていない患者で有意に高かった(p=0.004)」という。

(菅野守:医学ライター)