1960年代から多発性骨髄腫の治療に用いられてきたメルファラン+プレドニゾン(MP)療法は、大量化学療法が施行できない高齢患者の標準治療として現在も広範に使用されている。一方、サリドマイドは再発あるいは治療抵抗性の多発性骨髄腫に対して実質的な抗腫瘍効果を示すことが報告されているが、新規例における有効性は明らかにされていない。
フランス骨髄腫研究グループ(IFM)のThierry Facon氏らは、未治療の高齢患者を対象に、MP療法、MP+サリドマイド(MPT)療法、中等量メルファラン(100mg/m2)+自家造血幹細胞移植(MEL100)(ミニ移植)の有用性を比較検討するために無作為化試験(IFM 99-06)を実施した。10月6日付Lancet誌掲載の報告から。
65~75歳の症例を3つの治療群に無作為割り付け
対象は、未治療のstage II~III(Durie-Salmon判定基準)の多発性骨髄腫で、年齢65~75歳の症例とした。65歳未満でも大量化学療法適応外の症例およびstage Iのうち高リスクstage Iの基準を満たす症例は試験に含めた。
2000年5月~2005年8月までに447例が登録され、MP群に196例、MPT群に125例、MEL100群に126例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率、副次評価項目は奏効率、無増悪生存期間(PFS)、病勢進行後の生存期間、有害事象とした。
MPにサリドマイドを併用すると、生存期間がMPよりも約1.5年延長
フォローアップ期間(中央値)51.5ヵ月の時点における生存期間中央値は、MP群が33.2ヵ月、MPT群が51.6ヵ月、MEL100群が38.3ヵ月であった。PFSは、MP群が17.8ヵ月、MPT群が27.5ヵ月、MEL100群が19.4ヵ月であり、病勢進行後の生存期間はそれぞれ11.4ヵ月、13.4ヵ月、14.1ヵ月であった。
生存期間は、MPTレジメンがMP(ハザード比:0.59、p=0.0006)およびMEL100(同:0.69、p=0.027)よりも有意に優れていた。MEL100とMPの間には有意な差は認めなかった(同:0.86、p=0.32)。
Facon氏は、「MP+サリドマイド療法を未治療の高齢多発性骨髄腫患者の治療の基準とすべき強力なエビデンスがもたらされた」と結論し、「標準的MP療法よりも優れた治療法を発見する試みは40年間も失敗してきたが、MPT療法は高齢患者に対し進歩の時代を開くものだ」と記している。
(菅野 守:医学ライター)