緑豊かな地域の住民は健康格差が小さい?

提供元:ケアネット

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公開日:2008/11/20

 



最も緑が豊富な環境に居住する住民は、所得の差に基づく健康上の格差が最も小さいことが、イギリス・Glasgow大学公衆衛生・健康政策学のRichard Mitchell氏らの検討で判明した。緑豊かな自然環境に触れることは、健康および健康関連行動に独立の効果を及ぼすことが示されている。そこで、同氏らは「緑に触れる機会の多い環境は、社会経済的な地位の低さに起因する罹病の過程に影響を及ぼし、それゆえ所得差による健康上の不平等はその居住地域の緑が豊かであるほど目立たなくなるのではないか」との仮説のもとに調査を行った。Lancet誌2008年11月8日号掲載の報告。

健康格差の解消には、健康を促進する自然環境が重要




研究グループは、定年前の年齢のイングランド住民4千81万3,236人を所得および緑に触れる機会の程度で分類した。

2001~05年の死亡記録(36万6,348人)を収集して所得、全死因死亡率、原因別死亡率(循環器疾患、肺癌、意図的自傷行為)の関連を検討し、2001年に測定した緑に触れる機会の程度別に解析を行った。

緑に触れる機会の程度と全死因死には独立の関連が見られ、緑に触れる機会が多い群ほど死亡率が低かった。循環器疾患による死亡は全死因死と同様の結果を示したが、肺癌および意図的自傷行為による死亡には有意な関連は認めなかった。

緑に触れる機会の程度にかかわらず、所得が低いほど死亡率が高く、全死因死(p<0.0001)および循環器疾患死(p=0.0212)には有意差を認めたが、肺癌死、意図的自傷行為死には差が見られなかった。

低所得に起因する全死因死、循環器疾患死の健康格差は、最も緑に触れる機会の多い地域に居住する住民で最も小さかった。最も緑に接する機会が少ない群では、最低所得層の全死因死亡率は最高所得層の1.93倍であったのに対し、最も緑に触れる機会の多い群では1.43倍とその差が小さかった。

同様に、最高所得層に対する最低所得層の循環器疾患死亡率は、最も緑に接する機会が少ない群では2.19倍、最も多い群では1.54倍であった。一方、肺癌死、意図的自傷行為による死亡については、緑に触れる機会の多寡による影響は認めなかった。

著者は、「最も緑が豊富な環境に居住する住民は、所得の差に基づく健康上の格差が最も小さかった」と結論している。また、「本試験の意味するところは明確である」とし、「社会経済的な健康格差を解消するための戦いにおいては、健康を促進する自然環境がきわめて重要である」と記している。

(菅野守:医学ライター)