肥満と死亡リスクの関連を評価する際、従来の研究では主に身長と体重から算出するBMIに依り、体脂肪の分布はほとんど検討されていない。しかし臀大腿部肥満よりも腹部肥満のほうが慢性疾患リスクと密接に関連し、腹囲あるいはウエスト・ヒップ比がBMIよりも予測因子として優れている可能性が示唆されてもいる。そこで、独Institute of Human NutritionのT. Pischon氏らは、欧州における癌と栄養に関する大規模な前向き調査(EPIC)参加者を対象に、BMIに腹囲、生活習慣などを加え死亡率との関係について分析を行った。NEJM誌2008年11月13日号掲載より。
死亡リスクが最も低いのは男女ともBMI 25前後
分析は、EPIC参加者(1992~2000年に10ヵ国23施設にて男女25~70歳が登録)から9ヵ国35万9,387例を対象に、BMI、腹囲、ウエスト・ヒップ比と死亡リスクとの関連について行われた。年齢を時間変数とし、施設および参加時の年齢でモデルを層別化して、教育レベル、喫煙状況、アルコール摂取状況、身体活動、身長で補正したうえでCox回帰分析を行った。
平均追跡期間は9.7年。この間に14,723例が死亡していた。これらを分析した結果、BMIに関連する死亡リスクが最も低かったのは、男性がBMI 25.3、女性が24.3だった。
腹囲、ウエスト・ヒップ比は死亡リスクと有意に関連
BMIで補正後、腹囲およびウエスト・ヒップ比と死亡リスクとを検討したところ強い関連が見られた。
腹囲の最大五分位群の相対リスクは、男性で2.05倍(最大五分位群:≧102.7cm、最小五分位群:<86.0cm)、女性で1.78倍(同、≧89.0cm、<70.1cm)。ウエスト・ヒップ比の相対リスクは、男性1.68倍、女性1.51倍であった。
腹囲あるいはウエスト・ヒップ比を含むモデルで、BMIは死亡リスクと有意に関連していた(P<0.001)。
これらのデータから研究グループは、「BMIも腹部脂肪の蓄積もいずれも死亡リスクとの関連を示すことが見いだされた。死亡リスクを評価する際には、BMIに加えて腹囲またはウエスト・ヒップ比を用いる必要のある(特にBMIが低い場合)ことが裏づけられた」と結論している。
(朝田哲明:医療ライター)