重度難治性の強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)は、強迫観念や強迫行為、儀式行為などによる時間の浪費、閉じこもりなどによって生活が困難になるといった特性が見られる疾患である。このOCDの治療の選択肢として近年、行動療法や薬物治療とならんで、パーキンソン病による運動障害の治療法として有用性が確認されている視床下核への電気刺激療法が提唱されている。その有効性と安全性に関する臨床試験を行った、フランス国立衛生研究所(INSERM)のLuc Mallet氏らSTOC研究グループによる結果が、NEJM誌2008年11月13日号に掲載された。
実刺激と偽刺激を無作為に割り付け評価
試験は多施設協同クロスオーバー二重盲検試験で10ヵ月間にわたって実施された。実刺激治療3ヵ月+偽刺激治療3ヵ月群に8例、偽刺激治療3ヵ月+実刺激治療3ヵ月群に8例、それぞれ無作為に割り付けられた。
主要評価項目はOCDの重症度とし、Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)を用いて、3ヵ月の各治療期間終了時に2回にわたって評価が行われた。その際、一般的な精神病理学的所見、心理的・社会的・職業的機能、治療に対する忍容性の評価には標準的な精神医学的尺度とされるGlobal Assessment of Functioning(GAF)スケールと神経心理学的検査法が用いられた。
OCDの症状緩和とともに重大な有害事象確認
Y-BOCSスコア(0~40のスケール、スコアが低いほど重症度が低い)は、偽刺激後より実刺激後のほうが有意に低かった(平均値±SD:19±8対28±7、P = 0.01)。一方、GAFスコア(1~90のスケール、スコアが高いほど機能性が高い)は、実刺激後が偽刺激後よりも有意に高かった(56±14対43±8、P = 0.005)。神経心理学的尺度に基づく抑うつと不安の評価は刺激によって変化はなかった。
全体として15件の重篤な有害事象が見られ、そのうち1件が脳内出血、2件が感染症だった。重篤ではない有害事象も23件報告されている。
研究グループは、視床下核への電気刺激療法が重度OCDの症状を緩和する可能性が示されたが、同時に、重篤な有害事象のリスクが伴うようだと報告している。
(朝田哲明:医療ライター)