持続性または両側性の停留睾丸の男児には、クラインフェルター症候群などの遺伝子変調が、そうでない男児より高率で見られることが明らかにされた。これは、イタリアUniversity of PadovaのAlberto Ferlin氏らが、600人の停留睾丸の男児について行ったケース・コントロール試験で明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月19日号で発表されている。
核型異常、精巣導体形成遺伝子のINSL3などの突然変異について調査
Ferlin氏らは2003~2005年にかけて、停留睾丸の男児600人について、2~3年追跡した。また、1~4歳の停留睾丸でない男児300人をコントロール群とした。遺伝子変調としては、核型異常と、精巣導体形成遺伝子INSL3(insulin-like factor 3)、INSL3受容体、アンドロゲン受容体のそれぞれ遺伝子突然変異について調べた。
停留睾丸の男児のうち、396人が片側性、204人が両側性だった。そのうち、自然に下降しなかった持続性停留睾丸は、片側性で197人、両側性で121人だった。
遺伝子変調のオッズ比は、両側性停留睾丸が27.2、持続性停留睾丸が16.7
調査対象の遺伝子変調が認められたのは、コントロール群で1人(0.3%、95%信頼区間:0.1~0.8%)、停留睾丸の男児全体で17人(2.8%、1.7~4.5%)だったのに対し、両側性停留睾丸の男児では10人(8.3%、4.1~14.8%、p=0.001)、持続性停留睾丸の男児では16人(5.3%、3.0~8.4%、p=0.001)だった。
遺伝子変調発症に関するコントロール群に対するオッズ比は、両側性停留睾丸群が27.2(95%信頼区間:3.4~214.8)、持続性停留睾丸群が16.7(2.2~126.5)だった。
停留睾丸の男児で最も多く見られた遺伝子変調は、クラインフェルター症候群で8人、次がINSL3受容体の突然変異で5人だった。
なお、出生児体重が低い、または在胎月齢が短い停留睾丸の男児には、遺伝子変調は認められず、また睾丸の自然降下が多く見られた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)