64列マルチスライスCTは冠動脈疾患の診断に有用だが、現段階では従来法に取って代わるほどではないことが、ジョンズホプキンス大学医学部のJulie M. Miller氏らによる国際的な多施設共同試験CORE64(Coronary Artery Evaluation Using 64-Row Multidetector Computed Tomography Angiography)の結果として報告された。これまでマルチスライスCTの診断精度については十分な検証が行われていなかった。NEJM誌2008年11月27日号掲載より。
7ヵ国9施設291例について従来法と比較検討
CORE64スタディは、64列マルチスライスCT(0.5mm)血管造影の診断精度を、冠動脈疾患の疑いのある患者を対象に、従来の冠動脈造影法と比較することを目的とする。日本を含む7ヵ国9施設で実行された前向きの多施設共同試験で、登録患者(405例、2005年9月~2007年1月)はAgatstonカルシウムスコアの測定とマルチスライスCTによる血管造影を受け、その後30日以内に従来法を受け比較された。検討されたのは、カルシウムスコアが600以下だった291例の1.5mm以上の部位について。50%以上の狭窄を閉塞とし、Duke 冠動脈疾患指標を用いての疾患重症度が評価された。CT血管造影の診断精度(対従来法)はAUC(ROC曲線下面積)を用いて評価された。
診断精度は高く正確だが……
閉塞性冠動脈疾患は56%の患者に認められた。50%以上狭窄を検出・除外するCT血管造影の診断精度は、AUC 0.93(95%信頼区間:0.90~0.96)、感度85%(79~90)、特異度90%(83~94)で、陽性適中率91%(86~95)、陰性適中率83%(75~89)だった。
また血行再建術を受けた患者を同定する能力に関して、CT血管造影のAUCは0.84(0.79~0.88)、従来法は0.82(0.77~0.86)で同等であった。
血管ごとの解析(866血管)によるCT血管造影のAUCは0.91(0.88~0.93)。
疾患重症度については両方法による結果に高い相関が見られた(r=0.81、95%信頼区間:0.76~0.84)。
これら結果を踏まえMiller氏は「64列マルチスライスCTの血管造影で、閉塞性冠動脈疾患の徴候や重症度、血行再建術を要する患者の同定は正確にできるが、陽性・陰性適中率の結果は、現時点では従来法に取って代わるものではないことを示唆するものだ」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)