Step試験が早期中止に、細胞性免疫ワクチンはHIV感染を予防できず

提供元:ケアネット

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公開日:2008/12/11

 



期待の大きさを反映してか、落胆の声が世界中に広がっているという。MRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチンによる細胞性免疫はHIV-1感染の予防効果およびウイルス量の減少効果を示さず、一部の症例ではむしろ感染リスクを上昇させる可能性があることが、国際的な第II相Step試験の中間解析で判明したのだ。試験はすでに早期中止となっている。米San Francisco公衆衛生局HIV研究部のSusan P Buchbinder氏が、Lancet誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)で報告した。

免疫反応の誘導は確認されたが、感染率、ウイルス量は低減せず




これまでの観察試験やヒト以外の霊長類の試験で、細胞性免疫反応によりHIV複製はコントロール可能であることが示唆されている。そこで、Step試験の研究グループは、HIV-1のgag/pol/nef遺伝子を発現している5型アデノウイルス(Ad5)をベクターとする細胞性免疫ワクチンのHIV-1感染の予防効果あるいは血漿HIV-1量の低下効果を評価した。

本研究は、北米、カリブ海諸国、南米、オーストラリアの34施設でコンセプトの検証を目的に実施された二重盲検第II相試験である。HIV-1血清陰性例3,000例がMRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチン(1,494例)あるいはプラセボ(1,506例)を投与する群に無作為に割り付けられた。無作為割り付け時には、性別、ベースラインのAd5抗体価、施設で事前に層別化した。

主要評価項目はHIV-1感染率の低下(6ヵ月ごとに検査)あるいはセットポイント(ウイルス量の低下が停止した時点)のHIV-1ウイルス量(HIV-1感染の診断後3ヵ月に測定)とし、per-protocol解析およびintention-to-treat解析変法を行った。

予想に反し、本試験は初回の中間解析で事前に規定された無効判定基準を満たしたため早期中止となった。

中間解析では、ベースラインのAd5抗体価が200以下の症例のうち、ワクチン群741例のウイルス感染率は3%(24例)であったのに対し、プラセボ群762例も3%(21例)と差を認めなかった(ハザード比:1.2、95%信頼区間:0.6~2.2)。感染例は1例を除きすべて男性であった。血漿HIV-1 RNAの幾何平均値は、感染男性患者のワクチン群とプラセボ群で同等であった(4.61 vs. 4.41 log10 コピー/mL、効果に関する片側p値=0.66)。

全ワクチン投与例(Ad5抗体価低値例、高値例の双方を含む)から25%を無作為に抽出したサンプル(354例)について、ワクチンによって誘発されたインターフェロンγを産生する細胞をELISPOT(enzyme-linked immunospot)法で検出したところ、75%(267例)で反応が見られ免疫反応の誘導が確認された。

探索的な解析では、ベースラインのAd5抗体価にかかわらずワクチン群とプラセボ群のHIV-1感染のハザード比は、Ad5血清陽性の男性例(2.3、95%信頼区間:1.2~4.3)および陰茎包皮切除術を受けていない男性例(3.8、1.5~9.3)で高く、これらの症例ではむしろワクチン群の感染リスクの有意な上昇が示唆された。これに対し、Ad5血清陰性例(1.0、0.5~1.9)あるいは包皮切除術を受けた例(1.0、0.6~1.7)ではハザード比は高値を示さなかった。

著者は、「MRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチンによる細胞性免疫はHIV-1感染の予防効果を示さず、早期のウイルス量の減少効果も認めなかった」と結論し、「なぜ効果が不十分だったか、また一部の症例におけるHIV-1感染率の上昇のメカニズムについては、現在、究明を進めている」としている。

(菅野守:医学ライター)