大規模試験おける一般的な左室肥大検出法である心電図だが、臨床において左室肥大の「除外」に用いるのは必ずしも妥当ではない可能性が出てきた。University of Bern(スイス)のDaniel Pewsner氏らが体系的レビューとしてBMJ誌HPにて早期公表した(8月28日付、その後本誌10月6日号に掲載)。
感度は最高で21%
Pewsner氏らは高血圧患者を対象に左室肥大を心電図と心エコーの両方で評価している21試験、5,608例のデータを用い、心電図による左室肥大検出の正確さを検討した。心電図上左室肥大の指標としては Sokolow-Lyon index、Cornell voltage indexなど6種、それぞれ別個に検討された。
すると心電図による左室肥大検出は、特異度こそ高い(中央値:89~99%)が、感度は低かった(中央値:10.5~21%)。
陽性尤度比は最低で1.90という低値も
また陰性尤度比(特異度/偽陰性率)は0.85~0.91(中央値)とバラツキが小さい一方、陽性尤度比(感度/偽陽性率)は Romhilt-Estes scoreの5.90からSokolow-Lyon indexの1.90まで多様にわたった(中央値)。ちなみに最も古いSokolow-Lyon indexよりも明らかに優れている規準は、存在しなかった。
JNCはどう変わるか
これらよりPewsner氏らは「左室肥大の除外に心電図を用いるべきではない」と結論する。現在の米国高血圧ガイドラインJNC7では治療開始前のルーチンな心電図検査は推奨しているが心エコーには言及がないため、心電図による心肥大評価を推奨しているようにも読める。次回改訂でこの点に変化があるか興味深いところである。
(宇津貴史:医学レポーター)