アテローム動脈硬化性の頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜剥離術施行時の麻酔法として、全身麻酔と局所麻酔では周術期の脳卒中やその他の合併症の抑制効果に差はないことが、イギリスWestern General Hospital臨床神経科学科(エディンバラ市)のSteff C Lewis氏らが行ったGALA(General anaesthesia versus local anaesthesia for carotid surgery)試験の解析結果から明らかとなった。今後、いずれの麻酔法を選ぶかは、患者の好みや他の医学的な理由に委ねられることになりそうだ。Lancet誌2008年12月20/27日合併号(オンライン版2008年11月27日号)掲載の報告。
主要評価項目、QOL、入院期間に有意差なし
頸動脈内膜剥離術は、重篤な動脈硬化性の頸動脈狭窄による同側の脳卒中発症リスクを低下させるが、術中あるいは術後の合併症がその効果を相殺することが知られている。周術期の脳卒中を予測してそれを回避するには、全身麻酔下よりも局所麻酔下のほうが容易である可能性が示唆されている。
GALA試験の研究グループは、これらの麻酔法のイベント抑制効果の比較を目的に、多施設共同無作為化対照比較試験を実施した。
1999年6月~2007年10月までに、24ヵ国95施設から症候性あるいは無症候性の頸動脈狭窄患者3,526例が登録された。全身麻酔群に1,753例が、局所麻酔群には1,773例が割り付けられた。主要評価項目は、無作為割り付け時から術後30日までの脳卒中(網膜梗塞を含む)、心筋梗塞、死亡の発生率とした。
主要評価項目の発生率は、全身麻酔群が4.8%(84例)、局所麻酔群は4.5%(80例)であり、局所麻酔による1,000例あたりのイベント抑制数は3例にすぎなかった(リスク比:0.94、95%信頼区間:0.70~1.27)。
QOL、入院期間は両群間に有意な差はなく、事前に規定されたサブグループ(年齢、対側頸動脈閉塞の有無、ベースライン時の手術リスク)における主要評価項目の解析でも有意差は認めなかった。
以上により、GALA試験の研究グループは「頸動脈内膜剥離術においては全身麻酔と局食麻酔で有用性は同等であった」と結論し、「麻酔科医と外科医は、患者コンサルテーション時に、個々の患者の病態に応じていずれの麻酔法を選択するかを決めるべきである」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)