敗血症性ショック、強化学習モデルのバソプレシン投与で死亡率低下/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/04/01

 

 すでにノルエピネフリンを投与されている敗血症性ショック患者において、臨床医による実際の平均的な治療パターンと比較して強化学習(reinforcement learning)モデルは、より多くの患者で、より早期に、ノルエピネフリンの用量がより少ない時点でのバソプレシンの投与開始を推奨し、これに準拠すると死亡率が低下することが、フランス・パリ・シテ大学のAlexandre Kalimouttou氏らが実施した「OVISS試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月18日号で報告された。

強化学習モデルの妥当性を検証する米国のコホート研究

 研究グループは、複数の電子健康記録のデータセットに強化学習を適用し、ノルエピネフリンの投与を受けている敗血症性ショックの成人の重症患者において、短期的アウトカムと入院中のアウトカムの両方を改善するよう最適化されたバソプレシンの投与開始規則の治療結果を導き出し、これを検証し、評価を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。

 強化学習モデルの作成には、2012~23年にカリフォルニア州の5つの病院で、Sepsis-3基準の敗血症性ショックの定義を満たした患者3,608例(モデル作成コホート)の電子健康記録を用いた。投与開始規則の評価には、カリフォルニア州のデータセットから628例と、米国の227病院の1万217例(検証コホート)から成る3つの外部データセットを用いた。

投与開始時のSOFA、乳酸値も低い

 モデル作成コホート3,608例の年齢中央値は63歳(四分位範囲[IQR]:56~70)、2,075例(57%)が男性で、敗血症性ショック発症時のSOFAスコア中央値は5点(IQR:3~7)であった。検証コホート1万217例の年齢中央値は67歳(IQR:57~75)、5,743例(56%)が男性で、SOFAスコア中央値は6点(IQR:4~9)だった。

 検証コホートでは、臨床医による実際のバソプレシン投与開始と比較して強化学習モデルによるバソプレシン投与開始は、適応となる患者の割合が高く(87%vs.31%、p<0.001)、発症からの時間中央値が短く(4時間[IQR:1~8]vs.5時間[1~14]、p<0.001)、ノルエピネフリンの用量中央値が少なかった(0.20μg/kg/分[IQR:0.08~0.45]vs.0.37μg/kg/分[0.17~0.69]、p<0.001)。

 また、強化学習モデルによるバソプレシン投与開始は、開始時のSOFAスコア中央値(7点vs.9点、p<0.001)および血清乳酸値中央値(2.5mmol/L[IQR:1.7~4.9]vs.3.6mmol/L[1.8~6.8]、p<0.001)が低かった。

院内死亡率が有意に低下

 検証コホートでは、臨床医による実際のバソプレシン投与開始に比べ、強化学習モデルによる投与開始規則は報酬の期待値が高かった(重み付け重点サンプリングの差:31[95%信頼区間[CI]:15~52])。また、バソプレシンの投与開始がモデルによる投与開始規則と異なる場合と比較して、同規則と投与開始が同様である場合は院内死亡率(主要アウトカム)の補正後オッズ比(OR)が低かった(OR:0.81[95%CI:0.73~0.91])。

 著者は、「バソプレシンの早期投与は、医師の臨床上の警戒心や積極的なモニタリングの増加につながり、アウトカムの改善をもたらした可能性があり、強化学習モデルによる規則はアウトカムと関連しているようにみえるものの、交絡が真の効果をあいまいにしている可能性もある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 寺田 教彦( てらだ のりひこ ) 氏

筑波大学 医学医療系 臨床医学域 感染症内科学 講師

筑波メディカルセンター病院臨床検査医学科/感染症内科