早期子宮内膜癌に対しては、標準治療に加えて系統的骨盤内リンパ節郭清術を施行しても生存率の改善効果は得られないことが、イギリスManchester大学のH Kitchener氏らが実施したASTEC試験で明らかとなった。イギリスでは毎年約6,400人が子宮内膜癌に罹患しており、EU全体では約8万1,500人、北米では約4万100人に達する。その90%以上が50歳以上、年齢中央値は63歳であり、イギリスに限ると高齢者で増加傾向にあるという。Lancet誌2009年1月10日号(オンライン版2008 年12月13日号)掲載の報告。
標準治療と標準治療+系統的骨盤内リンパ節郭清術を比較
ステージIの子宮内膜癌に対する現在の標準治療は子宮摘出術と両側卵管卵巣摘除術(BSO)の併用である。系統的骨盤内リンパ節郭清術は子宮外病変の検索のほか、治療法としても検討が進められてきたが、その効果を実証するために無作為化試験の実施が求められていた。
ASTEC試験の研究グループは、系統的骨盤内リンパ節郭清術が子宮内膜癌女性の生存期間の延長に寄与するか否かを評価するための無作為化対照比較試験を行った。
1998年7月~2005年3月までに4ヵ国85施設から1,408例が登録され、標準治療群(子宮摘出術、BSO、腹腔洗浄細胞診、傍大動脈リンパ節触診、704例)あるいは標準治療に系統的骨盤内リンパ節郭清術を併用する群(704例)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は全生存率とした。再発リスクが中等度~高度の早期癌患者については、さらに術後治療としての放射線治療に関する無作為化試験(ASTEC放射線治療試験)に登録された。
補正後の全生存率、無再発生存率はともに両群で同等
フォローアップ期間中央値37ヵ月の時点における死亡例数は、標準治療群が88例(13%)、併用群は103例(15%)であり、全生存率のハザード比は1.16(p=0.31)と有意差はないもののむしろ標準治療群のほうが良好であった。全生存率の差の絶対値は1%であった。
解析時の死亡あるいは再発例は、標準治療群の107例(15%)に対し併用群は144例(20%)であり、無再発生存率のハザード比は1.35(p=0.017)と標準治療群のほうが有意に優れた。無再発生存率の差の絶対値は6%であった。
ベースライン時の患者背景と病理学的因子で補正したところ、全生存率のハザード比は1.04(p=0.83)、無再発生存率のハザード比は1.25(p=0.14)といずれも両群間に差を認めなかった。
研究グループは、「早期子宮内膜癌においては、系統的骨盤内リンパ節郭清術の併用が全生存率および無再発生存率にベネフィットをもたらすとのエビデンスは示されなかった」と結論し、「臨床試験以外の治療目的では、系統的骨盤内リンパ節郭清術をルーチンに施行することは推奨されない」としている。
(菅野守:医学ライター)