住む地域の標高が高いほど、透析患者の原因を問わない死亡率が低下することが、80万人超を対象にした調査で明らかになった。標高1,828mを超える地域に住む透析患者は、標高76m未満に住む患者に比べ、総死亡率は約15%低下するという。この原因は、高地に住むことによる低酸素状態によるもののようだ。
これまでの研究から、高地に住む透析患者は、エリスロポエチンの投与量が低いにもかかわらず、血中ヘモグロビン濃度が高いことはわかっていた。
米国Harvard大学のWolfgang C. Winkelmayer氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年2月4日号で発表されている。
80万超の患者を中央値1.78年追跡
Wolfgang C. Winkelmayer氏らは、1995~2004年にかけて透析治療を開始した、80万4,812人について、後ろ向きに調査を行った。追跡期間の中央値は、1.78年だった。
その結果、補正前の原因を問わない死亡率は、標高76m未満に住む群では220.1/千人・年、標高76~609m群では221.2/千人・年、標高610~1,218m群では214.6/千人・年、標高1,219~1,828m群では184.9/千人・年、標高1,828mを超える群では177.2/千人・年だった。
補正後の総死亡率は標高が高いほど有意に低下
年齢や性別、人種、検査値などを補正した後の総死亡率もまた、住んでいる地域の標高が高いほど、低かった。標高76m未満の地域に住む人に対する相対死亡率は、標高76~609m群が0.97(95%信頼区間:0.96~0.98)、標高610~1,218m群が0.93(0.91~0.95)、標高1,219~1,828m群が0.88(0.84~0.91)、標高1,828mを超える群は0.85(0.79~0.92)だった。
なお、年齢・性別補正後の全米標準死亡率について見てみると、住んでいる地域の標高が高くなるにつれて、死亡率が低下していた。だが、透析患者のデータと比較すると、透析患者のほうがその傾向が大きかった。標高76m未満群と標高1,828m超群を比較した場合、一般の死亡率の低下幅は7%だったのに対し、透析患者はその2倍以上の15%だったという。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)