乳児の入院に至る主要な要因にRSVウイルスがあることはよく知られているが、幼児におけるRSV感染症が医療資源全体に与える負荷については明らかではない。ロチェスター医科大学(アメリカ)のCaroline Breese Hall氏らは、アメリカの3つの郡(テネシー州ナッシュビル、ニューヨーク州ロチェスター、オハイオ州シンシナティ)で、5歳未満児における急性呼吸器感染症について、住民ベースの前向き調査を行った。NEJM誌2009年2月5日号より。
生後6ヵ月未満児のRSVによる入院リスクは高い
研究グループは、2000年~2004年にかけて入院した乳幼児、2002年~2004年にかけて外来救急や小児科クリニックを受診した乳幼児を登録し、培養と逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法でRSVを検出した。臨床情報は保護者からの聞き取りとカルテから入手し、RSV感染症と関連する入院率を算出するとともに、外来受診率を住民ベースで推計した。
登録した5,067例(入院2,892例、救急・外来2,175例)のうち、RSV感染症は入院が546例、救急・外来が355例、合わせて919例(18%)あった。全体として、11月から4月にかけての急性呼吸器感染症による入院の20%、救急受診の18%、小児科クリニック受診の15%がRSVと関連していた。年間平均入院率は、生後6ヵ月未満の乳児で17例/千人、5歳未満の幼児で3例/千人だった。大部分の乳幼児に併存疾患は見られず、早産児であること、低年齢であることが入院の独立したリスク因子と認められた。
5歳未満児の外来受診率の高さもターゲットにすべき
一方、5歳未満の幼児におけるRSV関連のクリニック受診率は救急受診の3倍と推計された。これを全米に当てはめると、RSV感染症に罹患する5歳未満児は210万人で、救急受診が約52万人、クリニック受診が約152万人(そのうち61%、126万人は2~5歳児が占める)と推計された。ところが、外来患者には中等度のRSV関連疾患が見られるものの、RSVに起因する疾患と診断が確定した患者はわずか3%に過ぎなかった。
研究グループは、アメリカにおける乳幼児の入院・外来いずれの環境においても、RSV感染症が罹患率に大きく関わっており、しかもRSV感染症に罹患した乳幼児の大部分はそれまで健康であったことから、ハイリスク乳幼児だけを対象とした感染管理戦略では、RSV感染症がもたらす医療資源全体に対する負荷にもたらす効果は限定的であり、わずか18%にとどまる5歳未満児のワクチンの接種率を上げるべきだと述べている。
(朝田哲明:医療ライター)