妊娠前や妊娠中に糖尿病だった人は、周産期や産後にうつ病を発症するリスクが、そうでない人に比べて2倍近くに増大するようだ。これは、米国Harvard Medical SchoolのKaty Backes Kozhimannil氏らが、米国の低所得層の母親を対象にした調査で明らかにしたもので、JAMA誌2009年2月25日号で発表した。
妊娠前・妊娠中に糖尿病だった人のうつ病を発症するオッズ比は1.85
Kozhimannil氏らは、ニュージャージー州の低所得者向け公的医療保険メディケイド加入者で、2004~2006年に出産した1万1,024人について、後ろ向き調査を行った。
妊娠前や妊娠中に糖尿病ではなかった人で、周産期や産後にうつ病を発症したのは、8.5%(886人)だった。一方、妊娠前や妊娠中に糖尿病だった人のうち、周産期や産後にうつ病を発症していたのは、15.2%(100人)と、大幅に高かった。
年齢や人種、出産時の在胎齢などを補正後、妊娠前や妊娠中に糖尿病だった人が周産期や産後にうつ病を発症するオッズ比は、そうでない人に比べ、1.85倍(95%信頼区間:1.45~2.36)だった。
周産期うつ病がなくても、糖尿病で産後うつ病リスクが約1.7倍に
また、周産期にうつ病のなかった人について、産後にうつ病の診断を受けたり、抗うつ薬を服用した人の割合は、妊娠前や妊娠中に糖尿病があったグループでは9.6%(62人)と、同時期に糖尿病のなかったグループ(5.9%、604人)に比べ、有意に高かった(オッズ比:1.69、95%信頼区間:1.27~2.23)。
同研究グループは、妊娠前や妊娠中の糖尿病は、試験対象の低所得者層の母親にとって、周産期や産後うつ病の独立したリスク因子のようだ、としている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)