肥満治療として減量効果に最も優れているダイエット食とは?
米国ハーバード公衆衛生大学院栄養学のFrank M. Sacks氏らは、これまでタンパク質、脂質、あるいは炭水化物それぞれの栄養素に着目したダイエット食の研究報告がなされているが、その減量効果は確立しておらず、また研究期間が1年を超えて行われているものがないとして、どの栄養素を重視した食事が効果的か、介入期間2年にわたる無作為化試験を行った。その結果、栄養素は関係なく、低カロリー食であることが肝心との報告を寄せている。NEJM誌2009年2月26日号掲載より。
栄養素の割合が異なる4つの食事療法群に無作為割り付けし2年間追跡
試験は過体重の成人811例を対象とし、脂質・タンパク質・炭水化物の各割合(%)が異なる4つの食事療法群、(1)20%、15%、65%、(2)20%、25%、55%、(3)40%、15%、45%、(4)40%、25%、35%に無作為に割り付け、2年間食事指導の介入を行った。
4群の食事はいずれも、心血管ヘルスガイドラインにのっとったもので、食品構成は類似していた。
主要評価項目は2年後の体重変化で、低脂質食群(含有比率20%)vs. 高脂質食群(同40%)、標準タンパク質食群(同15%)vs. 高タンパク質食群(同25%)、および含有比率が最も高い炭水化物食群(同65%)vs. 最も低い炭水化物食群(同35%)の比較が行われた。
低カロリーな食事であることが重要、栄養素は関係ない
体重は6ヵ月時点では平均6kg、ベースライン時の7%相当減っていた。しかし12ヵ月後にはリバウンドし始めていた。
2年時点での減量は、標準タンパク質食群3.0kg vs. 高タンパク質食群3.6kg、低脂質食群 vs. 高脂質食群はいずれも3.0kg、最高炭水化物食群2.9kg vs. 最低炭水化物食群3.4kgで、いずれも同等だった(すべての比較についてP>0.20)。
試験完了者の80%相当が、平均4kg減量していた。また14~15%相当の者が、試験前体重の少なくとも10%以上の減量に成功していた。
満腹、空腹感、食事に関する満足度、グループセッションへの出席率は、全群で同様だったが、セッションへの出席率が、減量(1セッション参加につき0.2kg)と強く関連していた。
一方で、4つの食事療法群ではいずれも、脂質関連のリスク因子および空腹時インスリン濃度の改善が見られた。これらを受けSacks氏は、「カロリーが低い食事療法が臨床的に意義のある減量をもたらす。どの栄養素の割合が際だっているかは関係ない」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)