メタボリックシンドロームの基盤にインスリン抵抗性があることから、メタボの人は塩分摂取に対して特異な感受性があるのではないか。これまで検討されていなかった、塩分摂取と血圧との関連を立証するために、米国チューレイン大学医学部&チューレイン高血圧腎センターのJing Chen氏らが、中国北部農村地帯の住民を対象に大規模な食事摂取スタディを行った。Lancet誌2009年3月7日号(オンライン版2009年2月16日号)より。
糖尿病ではない中国人1,906例を対象に
試験に参加したのは、16歳以上の糖尿病ではない中国人1,906例。
被験者は、低ナトリウム食(1日51.3mmol)を7日間摂取し、続く7日間は高ナトリウム食(1日307.8mmol)を摂取。基線時、および各食事介入の2、5、6日に測定され追跡された。
解析では、メタボのリスク因子情報が入手できなかったり、食事介入が完了しなかった参加者は対象外とされた(完了したのは、低ナトリウム食1,853例、高ナトリウム食1,845例)。
なおメタボの定義は、リスク因子が3つ以上(腹部肥満、高血圧、高トリグリセリド、低HDL、高血糖のうち)ある場合。食塩感受性が高いことの定義は、平均血圧が、低ナトリウム食摂取中5mmHg以上減少した場合、および高ナトリウム食摂取中5mmHg以上増大した場合とされた。
結果、被験者のうちメタボだった人は、283例(メタボ情報が入手できた1,881例のうち)だった。
メタボでない人と比べてメタボの人の高食塩感受性は3倍以上
多変量補正後、低ナトリウム食、高ナトリウム食のいずれの介入においても、メタボでない人よりメタボの人のほうが平均血圧の変動が有意に大きかった(p<0.0001)。
さらに、メタボのリスク因子が多いほど食塩感受性のリスクも上昇した。リスク因子がない人と比べてリスク因子が4つまたは5つある人は、高食塩感受性のオッズ比が、低ナトリウム食介入時は3.54倍(95%信頼区間:2.05~6.11)、高ナトリウム食介入時は3.13倍(1.80~5.43)だった。
Chen氏は「これらの結果は、メタボが食塩摂取による血圧反応を強化することを示唆するものだ。食塩摂取を削減することは、多発リスク因子を有するメタボ患者の血圧を低下することの、特に重要な要因と言えるだろう」と結論している。