加齢黄斑変性症(AMD)は、先進国の50歳以上の集団における重篤な視力障害の主要原因である。抗酸化物質は、網膜に対する酸化的障害を減弱するとの仮説があるが、AMDの一次予防における食物抗酸化物質の効果は不明である。
メルボルン大学眼疾患研究所(オーストラリア)のElaine W-T Chong氏らは、AMDの一次予防における種々の食物抗酸化物質(αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、リコピン)の役割について体系的なレビューおよびメタ解析を行った。BMJ誌10月8日付オンライン版、10月13日付本誌掲載の報告から。
選択基準を満たす12試験のデータを抽出して解析
標準化された判定基準に基づいて2名の研究者が別個に7つのデータベースを検索して関連文献を選び出した。抽出された4,192の抄録のうち12試験(プロスペクティブなコホート研究:9試験、無作為化臨床試験:3試験)が選択基準を満たした。
次いでデータ抽出および試験の質の評価が2名の研究者によって別個に行われ、得られた結果はメタ解析の手法を用いて定量的にプールされた。
コホート研究、無作為化試験とも抗酸化物質によるAMD予防効果は示せず
9つのプロスペクティブなコホート研究には合計149,203名が登録され、そのうち早期AMDは1,878例であった。検討された食物抗酸化物質は個々の試験で異なっており、必ずしも全試験が個々の抗酸化物質のメタ解析の対象とはならなかった。
これらのコホート研究のプール解析では、ビタミンA、C、E、亜鉛、ルテイン、ゼアキサンチン、αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、リコピンは、早期AMDの一次予防においてほとんど効果がないか、あるいは無効であった。
3つの無作為化臨床試験においても、抗酸化物質補助食品の早期AMDに対する予防効果は認められなかった。
Chong氏は、「食物抗酸化物質および抗酸化物質補助食品は、栄養状態が良好な西欧人の早期AMDの一次予防においてほとんど効果がないか、あるいは無効であった」と結論している。なお、今回の解析では、AMDの一次予防に影響を及ぼす可能性があるリスク因子は喫煙のみであったという。
(医学ライター 菅野 守)