イギリスの病院データ(HES)は先天性心疾患術後30日死亡率の評価には不十分

提供元:ケアネット

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公開日:2007/10/26

 

イギリスのhospital episode statistics(HES)は、病院の活動、死亡率などを施設間で比較する際に用いられる統計データであるが、その信頼性は疑問視されてきた。オックスフォードRadcliffe病院心臓外科のStephen Westaby氏らは、子どもの先天性心疾患開胸手術後の30日死亡率の解析におけるHESの有用性を、先天性心疾患監査データベース(CCAD)の情報との比較において検証した。BMJ誌9月20日付オンライン版、10月13日付本誌掲載の報告。

HESとCCADのデータを用い、先天性心疾患開胸手術後30日死亡率を比較




2000年4月1日~2002年3月31日までの先天性心疾患開胸手術に関するHESのデータとCCADの関連データについて解析した。HESには11施設のデータが、CCADにはイギリスの全施設(13施設)のデータが含まれた。主要評価項目は、生後1年未満の先天性心疾患患児に対する開胸手術後の30日死亡率とした。

HES、CCADの双方に30日死亡率の過少評価が




HES、CCADの双方にデータがある11施設のデータを直接比較したところ、HESには各施設で5~38%の手術記録の記載漏れがあることがわかった。また、HESには死亡確認記録の不足が中央値で40%(0~73%)も生じていた。

平均30日死亡率は、HESでは4%過少評価され、CCADでは8%過少評価されていた。CCADでは、比較に用いられた11施設中9施設で患者アウトカムの1~23%が見逃されていた(ほとんどが海外からの患児)。結果的には、CCADにも過少評価が生じていた。

HESは先天性心疾患手術を評価する情報源として不十分




Westaby氏は、「HESは、先天性心疾患手術の施行状況やアウトカム評価の情報源としては不十分である。CCADのほうが正確で完成度が高かったが、リスクを層別化した包括的な死亡率データを実現するにはさらなる検討が必要である」と結論している。

同氏は、「データの質に問題があるので、一般に公開されている個々の施設や外科医個人の死亡率データを再検討すべきだ」と指摘している。

(菅野 守:医学ライター)