PSA検診を実施しても、前立腺癌による死亡率を減少する効果はないとする研究結果が出た。これは、前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌の4種類の癌のスクリーニングについて米国で行われている、PLCO(Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian)癌スクリーニング試験の結果。米ワシントン大学のGerald L. Andriole氏らが、NEJM誌2009年3月26日号(オンライン版2009年3月18日号)で発表した。
同一号のNEJM誌で、ヨーロッパの研究グループが発表したPSA検診の有効性に関する結果とは、相反する試験結果となっている。
約7万7,000人を7年追跡
試験は、1993~2001年にかけて、米国内10ヵ所の医療センターで、7万6,693人を無作為に2群に分け、一方には前立腺癌検診を毎年行い(検診群)、もう一方には通常の医療を行った(対照群)。具体的には、検診群にはPSA検診を6年間、直腸診を4年間、それぞれ毎年行った。対照群には通常の医療ケアを行ったが、その中でPSA検診や直腸診を受けた人もいた。
検診群のPSA検診受診率は85%、直腸診受診率は86%だった。対照群のPSA検診受診率は40~52%、直腸診受診率は41~46%だった。
前立腺癌死亡率は両群で変わらず
7年間追跡後、前立腺癌罹患率は、対照群で95人/1万患者・年だったのに対し、検診群では116人/1万患者・年だった(罹患率比:1.22、95%信頼区間:1.16~1.29)。
前立腺癌による死亡率は、対照群で1.7人/1万患者・年(死亡者数44人)に対し、検診群で2.0人/1万患者・年(同50人)と、両群に有意差はなかった(死亡率比:1.13、95%信頼区間:0.75~1.70)。
なお、試験開始後10年のデータについては67%が完了しているが、7年追跡の結果と一貫しているという。
同研究グループは、試験開始後7~10年の追跡結果において、前立腺癌による死亡率は非常に小さく、検診群と対照群では有意差は見られなかったと結論づけている。
(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)