米国疾病管理予防センター(CDC)のメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)研究者チームによって行われた本研究は、MRSA感染症の疫学的状況を正確に把握することで、必要に応じ新たな予防対策を講じることを目的としたものである。
従来は病院発症、院内感染ばかりが注目されていたが、ER(救急救命室)受け入れ患者の感染症の原因として最も多いのがMRSAであるなど疫学的変化が起きており、コミュニティを対象とする調査の必要性が提起されていた。JAMA誌10月17日号報告より。
コミュニティを対象に調査
調査はCDCのActive Bacterial Core Surveillance(ABCs)/Emerging Infections Program Networkに関与している全米9つのコミュニティを対象に行われた。2004年7月から2005年12月までの同ネットワークデータからMRSA感染の発現率と分布状況を調べ、2005年の米国におけるMRSA感染症の負担の度合いが推定するというもの。
MRSA感染報告は、疫学的定義として、「医療機関関連:コミュニティで感染(Community-onset)あるいは病院で感染(Hospital-onset)」と「コミュニティ関連(community-associated):医療機関関連のリスク因子を有さない患者」を定め分類された。
推定MRSA発現率は10万人当たり31.8
対象調査期間中に観察されたMRSA発症例は8,987例。大部分が「医療機関関連」に分類されるもので、内訳は58.4%(5,250例)がコミュニティで感染、26.6%(2,389例)が病院で感染となっている。
一方、医療機関関連のリスク因子を有さない「コミュニティ関連」の感染は13.7%(1,234例)だった。その他に「分類不可」に類するものが1.3%(114例)あった。
2005年におけるMRSA発現率は、10万人当たり31.8と推定された。出現率は65歳以上で最も高く(10万人当たり127.7)、黒人(同66.5)、男性(同37.5)も高い。
調査期間中の病院での死亡は1,598例。2005年における死亡率は10万人当たり6.3と推定された。
また、すべての調査対象地域で「医療機関関連」後に「コミュニティ関連」が発生するという傾向があった。
CDCは、「MRSA感染は主に医療機関に関連しているが、集中治療室、急性期病院など施設に限ったことではなく、公衆衛生問題として取り組む必要がある」と結論づけた。
(武藤まき:医療ライター)