乳児に最もよく見られる急性感染症の細気管支炎(大半はRSウイルスが原因)には、エピネフリン+デキサメタゾン併用療法を行うことで、入院を有意に減らす可能性があるとの報告が、カナダから寄せられた。オタワ大学小児科のAmy C. Plint氏らPERC(Pediatric Emergency Research Canada)の調査による。北米での細気管支炎による入院は、ここ10~15年でほぼ倍増しており、入院医療費は1998年時点で約4億~7億ドルに上ると試算されている。一方で、細気管支炎への治療についてはなお論争の的となっており、気管支拡張薬とコルチコステロイド療法は広く行われているが、推奨はされていない。研究グループは、それら懸念や論争に一石を投じるべく、救急部門で行われている治療(エピネフリン吸入療法、短期のデキサメタゾン経口投与、もしくは両治療の併用)によって入院が減っているかどうかを調べた。NEJM誌2009年5月14日号より。
乳児800例対象の多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験
小児科救急部門を受診した細気管支炎の乳児800例を対象とした、多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験。対象患児は、無作為に4群(併用群、エピネフリン群、デキサメタゾン群、プラセボ群)に割り付けられた。
エピネフリンは、0.1%溶液3mLの吸入を2回、デキサメタゾンは、経口投与6回(救急部門で1.0mg/kg体重、以後0.6 mg/kg体重/日を5日間)で治療された。
主要転帰は、救急部の初回受診から7日以内の入院とした。
ベースラインでの臨床的特徴は4群とも同等だった。
入院率は併用群17.1%、プラセボ群26.4%
7日までに入院したのは、併用群が34例(17.1%)、エピネフリン群47例(23.7%)、デキサメタゾン群51例(25.6%)、プラセボ群53例(26.4%)だった。
重大な有害事象は特に見られなかった。
解析の結果、補正前解析では、プラセボ群と比較して併用群だけが、7日以内の入院率が低いように思えた(相対リスク:0.65、95%信頼区間0.45~0.95、P=0.02)。しかし、多重比較解析後には、この結果は意味をなさなくなっていた(P=0.07)が、研究グループは、「併用療法を行うことで、入院を有意に減らす可能性がある」と結論している。
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(医学ライター 武藤 まき)