人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防法として、rivaroxaban 10mgの経口投与(1日1回)がエノキサパリン(商品名:クレキサン)30mgの皮下注(1日2回)よりも有意に優れることが、カナダMcMaster大学のAlexander G G Turpie氏らが実施した無作為化試験(RECORD 4)によって確認された。American College of Chest Physicians(ACCP)の勧告によれば、人工膝関節全置換術施行後は少なくとも10日間の静脈血栓塞栓症の予防治療が必要とされる。術式の進歩による入院期間の短縮化に伴い、簡便で有効な外来ベースの経口抗凝固薬の開発が強く望まれているという。Lancet誌2009年5月16日号(オンライン版2009年5月5日号)掲載の報告。
非劣性が示されない場合は、優位性を評価
RECORD 4の研究グループは、人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防法としてのrivaroxabanの有効性および安全性について検討する二重盲検無作為化第III相試験を実施した。
人工膝関節全置換術を受けた3,148例が、術後6~8時間にrivaroxaban 10mg/日の経口投与を開始する群(1,584例)あるいは術後12~24時間にエノキサパリン30mg/12時間ごとの皮下注を開始する群(1,564例)に無作為に割り付けられた。術後11~15日の間に両側静脈造影による血栓の評価を行った。
有効性に関する主要評価項目は、術後17日までに発症した深部静脈血栓、非致死的肺塞栓、死亡の複合エンドポイントとし、rivaroxabanのエノキサパリンに対する非劣性をper-protocol解析で検証した。非劣性が示されなかった場合は、rivaroxabanの効果の優位性をintention-to-treat変法にて解析することとした。安全性に関する主要評価項目は大出血とした。
有効性が有意に優れ、安全性は同等
有効性に関する複合エンドポイントの発生率は、エノキサパリン群の10.1%(97/959例)に対しrivaroxaban群は6.9%(67/965例)と有意に優れていた(絶対リスク低減率:3.19%、95%信頼区間:0.71~5.67、p=0.0118)。
大出血の発生率は、エノキサパリン群が0.3%(4/1,508例)、rivaroxaban群は0.7%(10/1,526例)と両群で同等であった(p=0.1096)。
著者は、「人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防法として、rivaroxaban 10mg/日の10~14日間の経口投与はエノキサパリン30mg/12時間ごとの皮下注よりも有意に優れる」と結論し、「経口rivaroxabanの1日1回投与法は、新たな予防的抗凝固療法として確立された」としている。
(菅野守:医学ライター)