入院患者のうち、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの制酸薬を服用している人は、そうでない人に比べ、院内肺炎の発症率が約1.3倍に増加するようだ。制酸薬の種類別では、H2受容体拮抗薬の服用では同発症率に有意な増加は見られなかったが、PPI服用患者では同発症率が1.3倍に有意に増加していた。米国ベス・イスラエル・ディーコネスセンターのShoshana J. Herzig氏らが、6万人超を対象にした調査で明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月27日号で発表した。
制酸薬服用で院内肺炎発症リスクは補正前で約2.6倍、補正後約1.3倍
同研究グループは、2004~2007年にかけて、ボストンの医療機関に3日以上入院した18歳以上の患者6万3,878人について調査を行った。そのうち、PPIまたはH2受容体拮抗薬を服用したのは、52%だった。また、院内肺炎を発症したのは、3.5%に当たる2,219人だった。
制酸薬を服用しなかった群では、同発症率が2.0%だったのに対し、服用した群では4.9%と、有意に高率だった(オッズ比:2.6、95%信頼区間:2.3~2.8)。
多変量ロジスティック回帰分析の結果、制酸薬を服用した群の、服用しなかった群に対する院内肺炎発症に関する補正後オッズ比は、1.3(95%信頼区間:1.1~1.4)だった。
リスクは、PPI、H2受容体拮抗薬ともほぼ同等
さらに、H2受容体拮抗薬とPPIについて別々に見てみたところ、PPI服用群の院内肺炎発症率は制酸薬非服用群に比べ有意に高く、オッズ比は1.3(1.1~1.4)だった。H2受容体拮抗薬の同発症率も同様で、オッズ比は1.2(0.98~1.4)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)