台湾・中山医学大学のSai-Wai Ho氏らの後ろ向きコホート研究により、認知症患者においてプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により肺炎発症リスクが89%上昇したことが報告された。Journal of the American Geriatrics Society誌2017年7月号に掲載。
PPI使用群で肺炎の発症率が高かった
著者らは、台湾国民健康保険研究データベースを用いて、新規にPPIを使用した認知症患者786例およびこれらの患者とマッチさせた PPI使用のない認知症患者786例について肺炎の発症を調べた。肺炎リスクはCox比例ハザードモデルを用いて推定し、defined daily dosage(DDD:成人の想定平均1日用量)を用いて、PPIの累積用量-反応関係を評価した。
PPIを使用した認知症患者の肺炎の発症を調べた主な結果は以下のとおり。
・肺炎の発症率はPPI使用群で高かった(調整ハザード比[HR]:1.89、95%CI:1.51~2.37)。
・Coxモデル解析により、以下の因子が肺炎の独立した危険因子であることが示された。
年齢(調整HR:1.05、95%CI:1.03~1.06)
男性(調整HR:1.57、95%CI:1.25~1.98)
脳血管疾患の既往(調整HR:1.30、95%CI:1.04~1.62)
慢性呼吸器疾患(調整HR:1.39、95%CI:1.09~1.76)
うっ血性心不全(調整HR:1.54、95%CI:1.11~2.13)
糖尿病(調整HR:1.54、95%CI:1.22~1.95)
抗精神病薬の使用(調整HR:1.29、95%CI:1.03~1.61)
・コリンエステラーゼ阻害薬およびH2受容体拮抗薬の使用は、肺炎リスクを減少させることが示された。
(ケアネット 金沢 浩子)