コルチコステロイドと抗ウイルス剤は特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の早期治療に広く使われている。しかしその効果は明確ではない。
ダンディ大学(英国)プライマリケア・スコットランド校のFrank M. Sullivan氏らは、症状発現後72時間以内に集められたベル麻痺患者を対照とする二重盲検プラセボ対照無作為化要因試験を実施した。NEJM誌10月18日号掲載報告から。
プレドニゾロン、acyclovir、両剤、プラセボ10日間投与で比較
対象患者は、プレドニゾロン(コルチコステロイド)、acyclovir(抗ウイルス剤)、これら両剤またはプラセボのいずれかを投与する群に無作為に割り付けられた。期間は10日間。
主要転帰は顔面機能の回復とし、House-Brackmanスケールで評価された。副次転帰には、クオリティオブライフ(QOL)と、顔の様相、疼痛が含まれた。
最終転帰が評価されたのは、551例のうち496例だった。
プレドニゾロン投与群は有意に顔面機能を改善
3ヵ月時点で顔面機能が回復した患者の比率は、プレドニゾロン投与群vs非投与群で83.0% vs 63.6%(P<0.001)。acyclovir投与群vs非投与群では71.2% vs 75.7%(補正P=0.50)だった。
9ヵ月時点では、これらの比率はそれぞれ94.4% vs 81.6%(P<0.001)、85.4% vs 90.8%(補正P=0.10)となっている。
両剤で治療された患者の比率は3ヵ月時点では79.7%(P<0.001)、9ヵ月時点では92.7%(P<0.001)だった。
副次転帰に関しては投与群間の臨床的な有意差はみられていない。重篤な有害事象についても、いずれの投与群にもなかった。
以上からSullivan氏らは、「プレドニゾロンによる早期治療は有意な改善に結びつく。一方で、acyclovirの単独投与およびプレドニゾロンとの併用による付加的価値のエビデンスは得られなかった」と結論づけた。
(朝田哲明:医療ライター)