喘息に関連するアレルギー性炎症反応においては、インターロイキン(IL)-4、IL-13などの2型ヘルパーT(Th2)細胞由来のサイトカインが重要な役割を果たすことが示唆されているが、現在までに臨床的なエビデンスは示されてない。遺伝子組み換えヒトIL-4変異体pitrakinra(Aerovant)は、IL-4Rα受容体複合体を競合的に阻害することでIL-4とIL-13の両方の作用を抑制し、Th2細胞系のアレルギー性炎症反応を防止するという。
ピッツバーグ大学呼吸器・アレルギー・救急救命医療部(アメリカ)のSally Wenzel氏らは、pitrakinraの有効性を検討する2つの小規模な二重盲検プラセボ対照パラレルグループ無作為化第IIa相試験を行った。10月20日付Lancet誌掲載の報告。
投与経路の異なる2つの試験で有効性を検証
2つの試験はそれぞれ異なる投与経路を用いた。試験1では、pitrakinra 25mg(12例)あるいはプラセボ(12例)を1日1回皮下投与し、試験2ではpitrakinra 60mg(16例)あるいはプラセボ(16例)を1日2回に分けて吸入投与する群に無作為に割り付けた。
治療前および治療4週後に患者にアレルゲンを吸入させた。主要評価項目は、試験1がアレルゲン負荷後4~10時間における努力呼気1秒量(FEV1)の最大低下率、試験2はアレルゲン負荷後4~10時間におけるFEV1の平均低下率とした。
吸入投与では、pitrakinra群の平均FEV1低下率、有害事象が有意に良好
試験1に脱落例はなかったが、試験2はプラセボ群で2例、pitrakinra群で1例の脱落例があり、解析から除外した。
試験1の最大FEV1低下率はプラセボ群が23.1%に対しpitrakinra群は17.1%であった(p=0.243)。試験2の平均FEV1低下率はプラセボ群が15.9%に対しpitrakinra群は4.4%であり、後者のほうが3.7倍も良好であった(p=0.0001)。
皮下投与における喘息関連有害事象は、プラセボ群に比べpitrakinra群で少なく(p=0.069)、β遮断薬のレスキュー投与を要する有害事象はpitrakinra群で有意に少なかった(p=0.031)。吸入投与では両群とも喘息関連有害事象がより少なかった。
pitrakinraは、これまでの有効な喘息の抗炎症治療と比較しても有望
Wenzel氏は、「肺におけるIL-4およびIL-13の阻害をターゲットとしたpitrakinraによる局所治療は喘息症状を著明に減少させた」と結論している。
また、同氏は「pitrakinraは、これまでに良好な結果が報告されている抗IgE療法、抗ロイコトリエン療法、吸入コルチコステロイド療法などの喘息の抗炎症治療と比較しても有望なアプローチである」と指摘し、「pitrakinraの効果はIL-13の阻害のみによるのか、IL-4とIL-13双方の阻害によるのかは不明である」としている。
(菅野 守:医学ライター)