血栓溶解療法後の早期PCIはST上昇型心筋梗塞患者の虚血性合併症予防に有効

提供元:ケアネット

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公開日:2009/07/08

 



経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行できない病院に搬送されたST上昇型心筋梗塞患者はしばしば、初回PCIをタイムリーに受けることができないまま、血栓溶解療法を受けることになる。そうした患者の最適な治療についてカナダ・トロント大学South Lake Regional Health CentreのWarren J. Cantor氏らが検討を行った。NEJM誌2009年6月25日号より。

ST上昇型心筋梗塞患者を標準治療群とルーチン早期PCI群に無作為に割り付け




Cantor氏らThe Trial of Routine Angioplasty and Stenting after Fibrinolysis to Enhance Reperfusion in Acute Myocardial Infarction(TRANSFER-AMI)に参加する研究グループは、PCIを施行できない病院で血栓溶解療法を受けたST上昇型のハイリスク心筋梗塞患者1,059例を、標準治療群(必要があれば緊急PCIのために他院に搬送するが、通常は血管造影)と、血栓溶解後6時間以内に他院に転送しPCIを実施する群に、無作為に割り付け追跡した。

なお全患者にアスピリン、tenecteplase、ヘパリンまたはエノキサパリン(商品名:クレキサン)が投与され、抗血小板薬クロピドグレル(商品名:プラビックス)の併用が推奨された。

主要エンドポイントは30日以内の、死亡・再梗塞・再虚血・うっ血性心不全の発症または増悪・心原性ショックの複合とした。


ルーチン早期PCI群の虚血性合併症の発生率が有意に低下




標準治療群の患者の心臓カテーテル療法実施割合は、無作為化後中央値32.5時間で88.7%だった。一方、ルーチン早期PCI群の患者については、中央値2.8時間後98.5%の実施割合だった。

30日後の主要エンドポイント発生は、ルーチン早期PCI群の11.0%に対し、標準治療群では17.2%で発生した(相対リスク:0.64、95%信頼区間:0.47~0.87、P=0.004)。重大出血の出現率については両群間で有意差はなかった。

これらから研究グループは、「ST上昇型心筋梗塞のハイリスク患者で、血栓溶解療法後6時間以内に、ルーチン早期PCIを他院に転送され受けた群は、標準治療を受けた群と比べて、虚血性合併症の発生率が有意に低下した」と結論した。

(朝田哲明:医療ライター)