イギリスでは、変形性関節症(OA)は高齢者における身体機能障害の最大の原因であり、55歳以上の10%が疼痛を伴うOAに罹患しているという。OAに対する整形外科的な処置は一般に人工膝関節形成術が行われるが、術後退院しての物理療法をルーチンに行うアプローチの可否は不明である。
バーミンガム大学プライマリケア/一般診療科のCatherine J Minns Lowe氏らは、初回の待機的人工膝関節形成術施行後のOA患者における運動に基づく物理療法の効果について検討を行った。BMJ誌9月20日付オンライン版、10月20日付本誌掲載の報告。
機能的日常生活動作などにつき系統的レビューとメタ解析を実施
8つのデータベースを検索し、2つの専門誌および1つの専門誌に掲載されたカンファレンス記録集を手作業で調査した。初回の待機的人工膝関節形成術施行後に病院を退院したOA患者を対象に、運動に基づく物理療法による介入と標準的な物理療法を比較、あるいはレビューの判定基準を満たす2つの運動物理療法介入を比較した無作為化対照比較試験について系統的なレビューを行った。
評価項目は、機能的日常生活動作、歩行、QOL、筋力、膝関節の可動域とした。固定効果モデル、加重平均差、標準効果量、不均質性検査を用いて報告形式による統合(narrative synthesis)およびメタ解析を実施した。
運動物理療法の短期的効果を確認
同定された6つの試験のうち5試験がメタ解析の基準を満たした。術後3および4ヵ月における身体機能に対する標準効果量は、小~中等度の範囲で機能的運動物理療法群が良好であった。また、術後3および4ヵ月における膝関節の可動域およびQOLの加重平均差も、小~中等度の範囲で機能的運動物理療法群が良好であった。
これら短期的に認められた運動物理療法による治療効果は、1年後には確認できなかった。
長期的なベネフィットは確認できず
Lowe氏は、「初回の待機的人工膝関節形成術の退院後における運動を基本とした機能的運動物理療法は、短期的にはベネフィットをもたらすが、効果量は最大でも中等度であり、1年後にはベネフィットは消失した」と結論している。
一方、同氏は「運動物理療法の効果は1年後にはなくなるとのエビデンスは結論的なものではない」としたうえで、「脳卒中後のリハビリテーションで、特定の機能の直接的な訓練に焦点を絞った運動プログラムの有効性が示されており、同様の方法論に基づく人工膝関節形成術後の簡易な運動物理療法介入の1年後の効果を検討する試験が進行中である」と付記している。
(菅野 守:医学ライター)