若い年代・貧困層では、虚血性心疾患死亡率の低下がフラットに

提供元:ケアネット

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公開日:2009/08/07

 



英国リバプール大学公衆衛生部門のMartin O’Flaherty氏らは、スコットランドにおける年齢特異的な虚血性心疾患死亡率の、最近の傾向および社会格差との関連を調査した。スコットランドではここ20年で、虚血性心疾患死亡率が半減したが、近年は肥満および若年成人の糖尿病が増大しており、今後の虚血性心疾患死亡率の増加が危惧される。O’Flaherty氏らは、心血管リスク因子は社会経済的に虐げられていることと密接な関連が見られることから、仮に若い年代の死亡率が悪化している場合は、貧困層にその傾向が認められるだろうと仮定し本研究を行った。BMJ誌2009年7月25日号(オンライン版2009年7月14日号)より。

35~44歳、最も裕福な群と貧困群とで死亡率の差が大きい




1986~2006年の間の、35歳以上のスコットランド人男女を対象に、時間傾向的解析を行った。

主要評価項目は、補正年齢、年代、性および社会的に虐げられている人々の特異的な虚血性心疾患死亡率とした。

一般に裕福な群ほど虚血性心疾患死亡率は低く、貧困であるほど死亡率は高かったが、35~44歳で、最も裕福な群と最も貧困な群との差が大きかった。そうした差は年齢とともに縮小し、85歳超でほぼ同等となった。

調査対象の1986~2006年の間、全体で年齢補正後虚血性心疾患死亡率は、男性で61%低下、女性で56%低下した。

好ましくない生活習慣がリスク差の要因か?




中年以上成人では、対象期間中、虚血性心疾患死亡率はかなり、着実に減少し続けていた。しかし、35~44歳の男女については、1994年以降はフラットに推移していた。45~54歳の男女の場合は、おおよそ2003年以降はフラットになった。55~64歳の女性も、現在はフラットになっている可能性が認められた。若い年代の男女で死亡率がフラットになるのは、3群に設定した生活指標分類(裕福・中流・貧困)のうち、貧困の階層に限られていた。

O’Flaherty氏は「虚血性心疾患による早死は、やはり社会格差が主要な要因だった。さらに、より若い年代の、虚血性心疾患死亡率の低下がフラットになることは、初期警告の象徴的な徴候だろう。この傾向は、最も貧困な群に限定して観察された。虚血性心疾患の医学処置の顕著な悪化は考えにくい。この差を最もうまく説明するのは、虚血性心疾患の主要なリスク因子の好ましくない生活習慣(たばこと貧しい食事)にあるといえるだろう」と結論している。