世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)は、5歳未満児の下痢や肺炎、マラリア、麻疹および栄養失調による死亡を減らすため、Integrated Management Childhood Illness(IMCI、総合的小児疾患管理)戦略を1990年代半ばより開始した。その成果の一端について、5歳未満児の健康および栄養状態に関するIMCIの影響を、バングラデシュInternational Centre for Diarrhoeal Disease ResearchのShams E Arifeen氏らが、集団無作為化試験で評価を行った。Lancet2009年8月1日号より。
従事者へのスキルアップ等介入強化群と通常ヘルスサービス群を比較
試験は、バングラデシュMatlab小管区の、20の国立初期医療施設およびそれら施設の管轄区域(人口約350,000)で行われた。被験者は、IMCI(介入群、10の集団)か通常のヘルスサービス(対照群、10の集団)にランダムに割り当てられた。
IMCIは2002年2月に開始され、公衆衛生従事者に対するスキルアップ訓練、健康システムの改善、家族・地域ケアの推進の3つの要素から構成されている。
評価は、家庭および医療施設でのサーベイ、そして介入群と対照群の栄養状態、死亡率の変化を含んだ。
主要エンドポイントは、生後7日~59ヵ月の死亡率とし、intention to treat解析にて検討された。
ポジティブな変化は見られる
5歳未満児の年間死亡率の低下は、IMCI群と対照群とで同等だった(8.6%対7.8%)。
ただし、直近2年(2006~2007年)では、IMCI群の死亡率のほうが13.4%(95%信頼区間:14.2~34.3)、対照群よりも低かった。IMCI群のほうが死亡が、1,000生存出産児当たり4.2(同:-4.1~12.4、p=0.30)少なかった。
IMCI実行は、公衆衛生従事者のスキルの改善、健康システムを支援し、家族および地域ケアの拡充、疾患ケアに対するケアニーズを増大させることにつながっていた。
IMCI対象エリアでは、対照エリアよりも6ヵ月未満乳児を、母乳だけで育てている割合が10.1%(同:2.65~17.62)高かった(76%対65%)。また、生後24~59歳未満児での発育障害の割合が、IMCI群のほうがより迅速に低下していた(有病率の差:-7.33、95%信頼区間:-13.83~-0.83)。
Arifeen氏は、「IMCIは、すべての結果、成果指標で、ポジティブな変化と関連していた。母乳育児は増強され、発育障害は減少していた。しかしながら、今回の評価対象期間内で見る限り、死亡率への効果はもたらされていなかった」とまとめている。